表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

Species7

 森が深さを増していく。ここはもう樹海の様相だ。


「ねえ、前方に何かいるよ」

「久しぶりのエネミーか? ……レアMOBか」


 そのMOBの頭上にはYoung Forest boarというNAMEが表記されている。ボスやレアMOBはその頭上にNAMEが表記されるのだ。

 私達は立ち止まり、遠くからそれを観察する。


「フォレストボアのウリ坊ということかしら?」


 フォレストボアとは二本の大きな牙を持った猪型のMOBであり、この森では珍しくない。

 ハル姉が問うと、答えの代わりにリンドが大剣を構える。


「何にせよ、アイコンブルーのレアMOBだ。見逃さねえな」


 未開発領域のエネミーMOBの頭上にはアイコンとHPバーが付いている。安全の青から危険に近づくほど緑、黄、黒と変化していき、その色を見ることで戦闘をするかしないかを判断する。様々な要素が絡み合った複雑な演算はシステムが行い、それは状況に応じて刻々と変化する。

 このウリ坊は、その中でも最も安全な深い青色をしている。


(ロウ兄のLUKが高いからかな、さすがペガサス)


 ウリボーは武器を構えた私達に気付き、森の奥に逃げ始める。


「リンド、叩き込め。オトハとハルは待機」


 ロウ兄が弓を構え、ヒュンッという音と共に、矢を射る。放たれた矢はウリボーの右の後ろ足を正確に射抜く。バランスを崩したところにすかさず、リンドが振り上げた両手剣を叩き込む。


(この連携は何度見ても容赦ないないなあ……)


 ウリ坊はその体に刃を食い込ませながら地面に叩きつけられる。HPバーが急激に減少するも掃滅の一歩手前で止まる。


(変だな……リンドなら一撃でもおかしくないのに)


「トドメだ!」


 リンドが続く第二撃を加えようとした時、真横から木片の直撃を受けて吹っ飛ぶ。HPが一割減少した。木片には何やら強い力でへし折られた跡がある。


「な、何?」


 地面が揺れ、木々がざわめく。

 ゴォオオオオオ……。森の奥から轟音と共に木々をなぎ倒しながら、突如それは姿を現した。

 ただでさえ巨体の通常のフォレストボアの数倍の大きさを持ち、Head Forest boarというNAME持ちのボアだ。


「早速サード級のボス戦かよ……おいおい、アイコンが真っ黒じゃねえか」


 リンドが起きながら呟く。

 ボスにはHPバーが四本のファースト級、三本のセカンド級、そして二本のサード級がある。目の前のヘッドボアのHPバーは二本ある。


「サード級一体に、通常のボア三匹、後ろには瀕死のウリ坊か」

「離脱が賢明ね」


 ロウ兄とハル姉が即座に決断する。リンドが注意深く私達の所まで戻ると、私達は一歩後ろに下がる。すると、ボアの群れも一歩前進する。


「逃す気はないみたいだな。やるしかねえな」


 リンドが大剣を構えようとして、下ろす。私の方を向いて問う。


「オトハ、お前のMPポーション貰えるか?」


 初期支給品はHPポーションとMPポーションが五本ずつあった。アイテムは腰のポーチに最大五個までショートカット設定ができる。

 私はMPポーション五本全てをポーチから出してリンドに渡す。


「いいけど、何する気なの?」

「サンキュー。悪いけど説明している暇はねえな。ロウさん、ハル姉ちゃん、オトハを頼むよ」


リンドはそう言うと、MPポーションを五本全て飲み干した。そして、声高に叫ぶ。


「〈Trans〉!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ