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The melanccholy of Justin Reed

1


ジャスティン・リードは、自身が住むペントハウスの窓から夜の街を眺めていた。先ほどまで、電話で話していた母との会話のことを考えて、小さなため息が漏れた。


母のパトリシアは、2年前まで美容会社パトリシアを経営するキャリアウーマンだったが、息子であるジャスティンの30歳の誕生日に会社を退任し、彼に全てを譲った。しばらくは、海外旅行にパーティと、自由な時間を楽しんでいたが、最近はそれにも飽きてしまったらしく、ジャスティンを結婚させることに夢中になっているようだ。

32歳という年齢を考えれば、そろそろ結婚を視野に入れた付き合いをするべきだろう。女性との火遊びに魅力を感じる時期はとっくに終わっていたが、かといって、特定の相手との真剣な交際にはあまり気が進まなかった。しかし、いつまでもそうは言っていられない。結婚して両親を安心させることは、息子の務めでもある。ジャスティンは、再び、ざわめくニューヨークの街を一望した。この街のどこかに、自分が命をかけて愛したいと思える女性などいるのだろうか。ほぼ絶望に似た答えが頭をかすめたーー。



母は美容会社の社長、父は名の知れた映画監督、自身もいくつかの会社を経営しているジャスティンには、いつでも女性が言い寄ってきたが、彼自身を見てくれる女性は1人もいなかった。みんな、彼の家族や財産、ルックスばかりを気にしていた。いつか、ありままの自分を見てくれる人と出会い、激しく燃え上がるような恋が出来たらと望んでいたが、そんな淡い期待もどこかへ消えてしまっていた。たとえ愛がなくても、妻として、子供達の母として、責任を果たしてくれる家庭的な女性と結婚しよう。幸いなことに、母のパトリシアは、そのためなら協力を惜しまないだろう。




玄関のブザーが鳴り、ノア・ルーカスが部屋に入ってきた。左腕の時計を見ると、針は7時ちょうどを指していた。彼ほど、時間に正確な人間はいないだろう。

大学からの友人だったノアを会社の顧問弁護士として招いてから5年が経ったが、その間の彼の働きは期待以上のものだった。欠点をあげるなら、女性とのゴシップが耐えないということくらいだろうか。ハンサムで女性に優しいノアには、ジャスティンと同じように女性が集まってきたが、2人の違いは、ノアはその女性たちを拒まないということだ。


「やぁ、調子はどうだい」

ノアの皮肉めいた問いに、ジャスティンは呆れ顔を返した。これから、2人が向かう場所を考えれば聞く必要のないことだ。




ジャスティンは、真新しい黒のランボルギーニの助手席に腰をおろした。ノアの最近のお気に入りらしい。彼がアクセルを軽く踏むと、車は勢いよく発車し、ジャスティンのお尻が一瞬宙に浮いた。車内には、軽快な音楽が鳴り響いている。

「やっぱり君の運転で行こうなんて、間違っていたよ」

落ち着かない様子で、ジャスティンはぼやいた。今夜はノアの運転で行こうという提案にのり、運転手のウィルを家に帰らせたことを、さっそく後悔し始めていた。

乱暴な運転ー。ジャスティンは、ノアの欠点リストにひとつ追加した。

ノアは何やら愉快そうにして、この男2人のドライブを楽しんでいるように見えたーー







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