黒猫のクロ。
ねこがにゃあと鳴けばはじまるせかい
今日もあくびをしてはじまるいちにち。るいちゃんの傍にいて。
にゃん。しあわせ。ぽかぽかになる。
内緒なんだけど飼い主の女の子るいちゃんのことが本当はだいすきなんだ。
いつもはぼく、つんつんしてるけど、こっそりこうやって甘えたりしてる。
寝てるるいちゃんのお隣で丸くなって、ちらちら見てるんだ。
内緒だよ。るいちゃんには言わないでね。
ぼくはるいちゃんに小さな時に拾われてから
るいちゃんを守るために生まれてきたことを知ったよ。
るいちゃんに近づくヤツは許さない。
るいちゃんのためにぼくは毎日るいちゃんと一緒にいるよ。
でもおなかがすいたから、るいちゃんを起こすよ。
耳元でこうするんだ。
にゃあーーぁーーごあーーーん!
こうすればるいちゃんは起きるんだ。
「うぅうるさいっっっ!」
毛布を頭まですっぽり被って見えなくなっちゃった。
にゃあ...うん。いつも通りだ。
るいちゃんを起こすのがぼくの毎日の役目になってる。
だって、おなかすいたもん...
るいちゃんはいつもいつも朝は起きれないんだよ。
ぼくがいないとるいちゃんはだめなんだな。
枕元にそっとぼくもまるまってよう。
ごろごろごろ。のどがなる。
知らないふりしてるいちゃんに背中を向けてるぼく。
「...クロ」
毛布の中から手を出して、手探りでぼくのからだをさわろうとしてる。
しっぽで返事。ぱたっと。
「クロ!」
ぼくのからだを引っ張って毛布の中に引きずり込んだ。
ギニャッ。やめてよー。いつもいつも!
「クロあったかーい」
るいちゃんの手はいつも冷たい。
ぼくはいつもびっくりだよ。
「もふもふー」
といいながらぼくのからだをなでてくれる。
にゃあ。別にいいけど。嫌じゃないし。
るいちゃんのいいニオイ。
だけどもう暑いよ。毛布からスルッと飛び出した。
キッチンに向かう。
このキッチンでいつもあのカンヅメが出るんだ。
ぼくのごはん!きょうはしらすかな?まぐろかな?
ごあんごあん。にゃあ。
「わかったわかった!ごはんあげます!」
もぞもぞっと毛布からやっと出てきた。
髪なんてぼさぼさで、ぼんやりした顔でキッチンにきてくれた。
ごあん!足元に擦り寄る。催促。催促。
「眠い...」とつぶやきながらカンヅメを取り出するいちゃん。
ぼくのお皿を洗って
カンヅメがパキッと音がしていい匂いが漂ってきた。