熱い体
熱い…いや寒い。服はびしょ濡れで冷えている。けど体の内側はすごく…熱い。急いで入ったこの廃墟の床は冷たく、体がどんどん動かなくなっていく。
空は…空はどうなった?少年とお姉さんは安全な場所に行っただろうか。
確かめたい、けど体が動かない。
必死に、けれどゆっくり、顔を上げる。
「雨か?すっかり止んでいるぜ。」
「・・・」
背中に羽の生えている男が、羽に鎖のついた男が、目の前に立っていた。
「おいお前、熱すげえな。」
羽の男が僕の額に手を置く。
「おい?大丈夫か?話せるか?」
「何で来たんだ…」
「おっ話せるんだな。とりあえずドームの中にいかねえ?ここじゃ寒いだろ。」
「ドームの中には…いかない…」
「はあ?」
羽の男は僕の額をグッと押した。
「うっ…」
頭がクラクラして、顔を背ける。
「あー痛かったか?わりぃ」
ゆっくりと立ち上がる。体を動かすたびに頭がクラクラして、体はとても重たい。けれど、目の前の羽の男から逃げなければいけない。僕は、…僕はドームの中に行ってはいけないから…
「おー大丈夫か?」
「何しに…来たんだ…!!」
立ち上がる手前で、視界に入った短い木の板をつかみ勢いよく横に振る。羽の男が近づこうとするのを阻止するために…
「おい!あぶねえよ?」
「近寄るな。」
「いや、俺はお前を助けようとだな」
「近寄るな!」
あまりにも頼りない長さの板を握り締め、僕は羽の男をぼんやりと見つめる。
目の前にいるはずなのに、とても遠く感じる。
羽が男と同化して見える…
「おい?どうした?」
羽の男が近づいて来る……僕はあの男に捕まっちゃいけない…
手を横に振る。もうどっちの手を振っているのか、よく分からない…
「おっと」
振っていた手をつかまれる。
「とりあえず、ドームの中に行こうぜ。檻でお前の話、聞いてやるよ。」
羽の男の手が、僕の目を覆う。
「僕は…行かない…」
「はーい、おやすみ?」
僕は手を振り払えないまま、男の羽に囲まれて意識を失った。
少し久しぶりに更新しました。
今日はお腹が空くことを予想して、ミルクキャンディーを買いました(これ、おいしいやつだったなーと(笑))
また早めに次を投稿しようと思ってますので、
次回も読んでいただけたら嬉しいです。
祭狐