青い波
少年が気持ち良さそうに伸びをしているのを見て、僕は少しホッとした。少年は今日のことを楽しみにしていてくれたようだ。僕が来た時から表情が明るくなってくれて、僕も少し嬉しかった。
「じゃあ少年、さっそく海で遊ぼうか。」
「うん!」
砂浜の上に置いたリュックから、まず浮き輪を出して、大きな布を砂浜の上に広げて、その他の荷物を上に乗せた。
「おにぃさん、これ、なに?」
少年が、まだ膨らましていない浮き輪を持ち上げて不思議そうな顔で僕を見ている。
「少年、浮き輪って知らないかい?」
「うきわ?しらない。」
「それは海で遊ぶ道具だよ。うーん、じゃあ風船は知ってるか?」
「ううん。」
「そっかぁ、少年達の世代は知らないのか。」
「うん。」
「まあ見てれば分かるよ。」
マスクをはずして浮き輪に空気を入れ始める。
「ねぇおにぃさん、ボクもなんかおてつだいしてもいい?」
「おぉ少年はいい奴だな。じゃあ少年、リュックの中に入ってる機械を出してくれるか?」
「うん!」
少年がリュックから、ズルズルと巨大な機械を引っ張り出す。
「おにぃさん、これはなに?」
「あぁ、それは扇風機っていう、風を起こす機械だよ。」
「かぜ?びょうき?」
「あっそっか、少年の知ってるのは病気の風邪なのか。」
「うん。まえ、ほんでよんだ。」
「やっぱり頭が良いんだな、少年は。前はね、この世界には風っていうのが吹いてたんだよ。」
「ふいてたって?」
「あぁ、う~んと。」
少年の髪に息を吹きかける。
「わっ、どうしたのおにぃさん。」
「こんなことが、人の力を使わなくても自然に起きてたんだよ。風の力で。」
「へぇ~。」
少年はちょっと分かったようで、理解したような、してないような曖昧な顔をしていた。
「ほれ、できた。」
「わぁ。これがうきわなんだぁ。」
「少年、シャツとズボンを脱いで、浮き輪被って海に飛び込んでおいで。」
そう言って僕は浮き輪を渡した。
少年はすぐに着替えて、浮き輪を僕のジェスチャー通りに被って、海へと飛び込んだ。
「おにぃさん!みて!うかんでる!」
「浮き輪はそういうためのものだよ。」
「へぇ~!すごいね!」
とても嬉しそうだ。また少し、僕も嬉しくなった。
「おにぃさん!」
「うん?」
「ボクがとびこんだら、みずがゆれてる!」
「あぁ、それが波だよ少年。前はその波も、自然に起こっていたんだ。」
「へぇ~!!」
そして、電源装置に繋いだ扇風機のスイッチをONにすると、扇風機の起こす風が、少年の髪や頬を撫でていった。
「おにぃさん!」
「うん?」
少年が嬉しそうな笑顔で僕を見て、
「かぜって、なみって、きもちいいんだね!」
僕は少年の笑顔を見て、今日三度目の嬉しさが込み上げてきた。
進みが遅いかもしれません。
ごめんなさい。
次話も早くかきたいと思うのでよろしくお願いします。
読んでいただきありがとうございます!