白い空
「自由ってナニ?」
と、白い空が言った。
僕はマスクをつけて、そっと空を見上げる。
「自由かぁ。」
白い空は、僕が答えを言うのをじっと待っているようだ。なんだか、じっと見詰められているような気がして下を向いて歩く。
「僕には分からないなぁ。」
白い空がそわっと動く。
「どうして?」
「うーん、僕は自由になったことがないからかなぁ。」
「ないの?」
「うん。」
ふと、足元に水溜まりがあることに気づく。波紋一つない、きれいな水溜まりに、僕の姿が映っている。そしてその後ろに、もちろん空も見える。
「なんで?自由になりたくないの?」
水溜まりから目を反らして、またそっと歩く。
「なりたいよ。でも、自由が分からないのに。分からないものにはなれないだろ?」
歩いても、点々と続く水溜まり。大きくなったり、小さくなったり。そして、水溜まりを辿って前を見ると、一人の小さな少年が、大きなバケツを持ってフラフラと歩いている。
「なぁ空。」
「ん?ナニ?」
「また後で来るな。」
「うん、分かった。」
空を見上げて笑顔を向けると、白い空はまたそわりと動いた。
それを見て、前を向く。
「おーい、少年。そこの少年。」
前方の少年がよたよたと後ろを振り返る。
「ほれほれ、持つから。」
少年の手からバケツを持ち上げると、少年は下を向いたまま、軽く会釈をした。
「少年、もう空は見てないから、上を向いても大丈夫だよ。」
「…しろ様?」
「あ、そうそう、白様。」
「ほんとう?」
「うん。」
少年が僕の顔を見る。少年の目には涙が揺れていた。
「お水、たくさんこぼしちゃった…」
「うん、大丈夫だよ。」
バケツを片手で持って少年の頭を撫でる。
「おかあさんが、びょうきになっちゃって。」
「うん。」
「おねえちゃんは、ずっとおへやにいて。」
「うん。」
「みんな、げんきになってほしくて。」
「うん。」
少年が僕の服の袖をぎゅっとつかむ。
「少年、よく頑張ってるな。」
「…うみ。」
「うん?」
「うみ…きれいだった。」
「そうだな。あそこはとても綺麗だよ。」
「ボクがうまれる前は、なみっていうのがあったんでしょ?」
「少年は頭がいいんだな。そうだよ。波のある海も綺麗だ。あっでも、これを言ってたことは内緒な。」
「うん。」
「少年、またここにおいで。」
「うん。」
「それでまた、海に行こう。僕が連れていくから。」
「うん。」
「じゃあ、またな。またここに来た時には、笑顔で上を向いて、空に僕に会いたいって言うんだよ?」
「しろ様に?」
「あ、そうだったな。白様に、な。」
「うん!」
目の前に巨大なドームが、地中から静かに現れる。
少年にバケツを渡す。
「バイバイ。」
「またな。」
少年がドームの中へと消える。ドームはまたゆっくりと、地中へと消えていった。
「空。」
「あ、戻ってきたの?」
「うん。」
「ねぇ、次は何の話をする?」
「そうだな。次は…何の話をしようか。」
自由について考えてみたいと思いつつ、上手くまとめられない不安しかありません(笑)
是非、アドバイスやコメントよろしくお願いします!