かおが熱いのは君の真剣な目のせいか、アルコールのせいなのか。
月を待つ君の後ろ姿。
おばさんを通じて渡してあった花柄の敷物で花見の場所取りをしていたのは、見慣れないスーツの大きな背中。
見ない内に幼馴染の男の子はすっかり大人になってしまったらしい。
「早かったな」
重箱と酒瓶を手に立ち尽くす私に不意に気付いて君は手招く。
愛想のないぶっきらぼうな調子は昔と変わらず、ホッとして私は敷物に上がる。
二人並んで料理を突付き、酒をなめつつはらはら舞う花びらと月を眺めた。
周りはどんちゃんとにぎやかだが、私も君も無口な方で、皿に料理を取ったり、互いに酒瓶をたぐり寄せ手酌で酒を呷る。
満月の下の桜吹雪って、何て綺麗なんだろう。
「月が綺麗だね」
ぼんやりと呟くと、丁度その時隣で紙コップを呷っていた君はむせた。
「ちょ、大丈夫?」
「俺は死んでもいい」
「は? え、酔ってる? ねえ、大丈夫?」
ウワバミの筈の君は目元を赤く染めて、背中をさする私の手をつかみ、見据えて来る。
「あんたの為なら死ねる」