エピローグという名の過去のお話
幼い頃、今より少しだけ生活が楽で、食事もちゃんと取れていた頃、元気の有り余ったジュラは悪戯好きのガキ大将だった。子分を引き連れてはささやかないたずらを繰り返した。体が小さく、体を動かすよりも書を読むのを好んだケーニッヒを、外によく連れ出してくれたのはジュラと、そしてユラだった。
「おまえはしょもつをよくよんでいるから、おれの"さんぼう"だからな。それで、とうぜんおれが"たいしょう"だ」
よく幼い頃の兄はそう言って、その度に胸を張った。
「ねぇ、わたしは? わたしは!」
「おまえは……う~ん。どうしよう?」
そしてその都度、ユラがそう聞くのも、ジュラが答えに詰まるのもお決まりだった。そして困ったようにケーニッヒに答えを求めるのも。
ただ、何時のころからか、ユラの質問に対するジュラの答えは一つに定まった。
「お前は、俺の嫁だ」
「うん!」
答えるジュラと、うれしそうに笑うユラ。ケーニッヒにとっては、二人との大事な思い出。そして同時に、初恋と失恋の記憶でもあった。
「それで、お前が参謀、俺が大将だ!」
「そうだね。僕が参謀で、兄貴が大将だ」
神秘の泉 (完)
これにて”完”とさせていただきたいと思います。読んで下さった方ありがとうございました。