第五話 その3―Side:Ryuuya―
渋々、といった感じで起き上がる舞華。皆、突然起こった舞華の暴走に唖然としていた。そりゃそうだ。
「ねえ、鈴木と金城さんって、知り合い…なの?」
クラスメイト達の気持ちを代表するような感じで、春原が言った。
「うん、俗に言う幼なじみって奴かな。家が近所で、小3までずっと一緒だった。まあ、小4の時に舞華はアメリカに行っちまったけどな」
「うん、舞華の実家はあっちだからね。舞華、ハーフだし」
ハーフ、という言葉に教室が再びざわめく。
僕はそれ以上の追求を避けるため(何しろ面倒臭い)、教室から逃げ出した。
放課後。
教室で二人っきり。…クラスの奴らが変な気を回したらしい。全く、余計なお世話だっての。僕と舞華は恋人でもなんでもなくて、ただの幼なじみだと言っているのに。
おかしいな、「女の子と二人っきり」「放課後の教室」っていうキーワードがあるのに、全くドキドキしない。多分、相手が舞華だからだろう。
「そういえば竜也って、何か部活とか入ってるっけ?」
「ああ、演劇部にな」
「あー、何か言ってたね、大分前に。確か中学の時もそうじゃなかった?」
「まあな」
「何、部長さん追い掛けて入部、だっけー?」
「うっせえ」
「むう、一途だね。妬けちゃうんだよ」
「ほっとけ、それにそんなんじゃねえよ」
「そうなの?」
「ああ、恋愛感情とはちょっと違う気がすんだよ」
「ふうん?」
「何つーか、あの人に対して恩を感じてるとか、そんな感じだな」
「分かるような分からないような……」
「どっちだよ」
「ねえ、演劇部、楽しい?」
「ああ。何より僕にとって居心地がいい」
「舞華も入ろうかな、演劇部」
「ほう?」
「楽しそうだし、それにそうしたら竜也と一緒にいられるし」
こ、こいつ…!聞いてるこっちが恥ずかしくなるような台詞をあっさり言いやがって!こ、これだからお子様はっ!
僕は心の中のそんな思いを全く表情に出さずに答える。
「おう、いいな。演劇部は役者が不足してるんだ。歓迎するぜ?」
「ホント!?」
こうして、舞華の演劇部への入部が決定した。