第五話 その2―Side:Ran―
席に座ると、隣の鈴木が心配そうに
「大丈夫か、春原?」
と聞いてきた。私は少し慌てて、
「だ、だだ、大丈夫大丈夫!ほらほら、こんなに元気!」
と返事を返した。
……全くもう、調子が狂う。こうやって優しい言葉をかけてくれるのだって、別に私だからっていう理由からじゃなくて、鈴木が優しいから。あいつは基本的に誰にだって優しい。たまに意地悪言ったりしたりして悪ぶってるけど、根っこの部分がいい人過ぎるのだろう。
ま、まあ、おかげで、私は鈴木が他の女の子に声をかけるたびにはらはらするはめになるのだけれど。
平山先生が教卓をパンパンと叩きながら言う。
「えっと、知っている人も居るかもしれませんが、うちのクラスに転校生が来ることになりました」
その話ならクラス全員が知ってるよ!
みんな、そんな感じで先生に「早くしろ」という視線を送る。そんなみんなの視線を受けて平山先生は、
「で、では入ってきてください」
と、廊下に向かって声をかけた。
入ってきたのは、金髪で不思議な髪型をした女の子だった。ああいうのを縦ロール、って言うのかな。どっかで見た気がする。ドリルとか、円錐形の何かが頭の両サイドにぶらさがっているようにも見える。
……ああ、誰かに似てると思ったら、真・〇姫†無双の曹操に似てるんだ。
「それでは自己紹介を」
という平山先生の声に促され、その女の子は黒板に自分の名前を書いて、こう言った。
「金城舞華〈かねしろまいか〉と言います。アメリカに居たので日本のことはよく分かりませんが、仲良くしてください」
へえ、帰国子女なんだ。
クラスメイトたちは口々に、
「かわいい!」
「彼氏いる?」
「スリーサイズは?」
「え、帰国子女!?」
とか聞いていた。まあ、私もそんなクラスメイトたちの一人だったけれど。
私はちらりと隣の鈴木を盗み見る。どんな顔をしてるのか、ちょっと気になる。デレデレしてたらやだなぁ……。
「…………?」
何か、ショックを受けた顔をしてた。……何で?
そのまま観察していると、びくっと震えて固まってしまった。な、なに、何なの?一体何が起きたの?
鈴木の目線の先をたどっていくと、金城さんと鈴木の目が合っていることに気付いた。そしてその直後、
「りゅ・う・や────っ!!」
と叫びつつ、金城さんが鈴木に抱きついた。