第五話 その1―Side:Ran―
いつもと同じ時間に朝起きて、いつもどおりに学校に行って。いつものみんなと学校で過ごして。
そうやって今日もいつも通りの一日になるんだろうな、と私は漠然と思っていた。
…朝のホームルームが始まるまでは。
今朝は何だか教室が騒がしい。何だろう?素直に聞いてみることにした。
どうせならこのチャンスを活かして、鈴木に話し掛けてみよう。よし、落ち着け私。深呼吸、深呼吸。うん、準備OK。なるべくさり気なく、
「お、おはよ、鈴木。にゃんで今朝はこんな騒がしいの?」
噛んだっ!?
「おう、おはよう春原。何か、転校生が来るらしいぜ?」
「転校生?この時期に?」
よかった、気にしてないみたいだ。
「ああ、この五月に転校ってのもおかしな話だよな。ところで春原、顔が赤いけど大丈夫か?」
そう言って鈴木は私の額に手を当てた。う、うわ、わ、わ、わひゃあっ!
「うひゃうっ!」
な、何か変な声出たっ!?
「だ、大丈夫か、春原!?何かどんどん熱くなって…おい、しっかりしろ!」
す、鈴木が触っているから熱くなってるんだってば!でも私が返事をしない所為で余計鈴木は心配になったみたいで、さらに私に呼び掛けている。そんな時、親友の由比が助け船を出してくれた。
「鈴木クン、蘭のことはうちらに任せて?ね?」
「あ?…ああ、分かった。…春原は大丈夫なのか?」
「大丈夫、大丈夫。オンナノコにしか分かんない感じの病気の症状だから、鈴木クンはそっとしといてあげて?ね?」
「……了解」
そういうと由比は、私のことを引っ張っていってくれた。
少し離れた所まで来たところで、
「ありがとう由比、世界で一番目に、いや一番は鈴木だから、二番目に愛してる」
と私が言うと、由比は苦笑いしながら
「あんたも大変ねえ、蘭。鈴木クンの鈍感さはかなりハードル高いわよ?」
と言った。私は少し頬を膨らませつつ、
「うっさい」
とだけ答えておいた。
由比は私が鈴木の事が好きなことを知っている唯一の人間だ。まあ由比に言わせると、「分かりやすいので、誰でも見れば分かるわよ」と言う事らしいけれど。
ドアを開け、担任(平山郁夫〈ひらやまいくお〉29歳独身)が教室に入ってきたので、私は由比に手を振って自分の席に着いた。私の席は鈴木の右側だ。
転校生、どんな子だろう?