第四話 その4
最終試合は、僕と暦先輩。
お互いに竹刀を構え、お互いに「邪魔だから」とヘルメットを外し、5メートル程の間隔を開けて対峙する。
暦先輩が口を開く。
「久しぶりだな、竜也とこうしてやり合うのも」
僕も答える。
「そうですね、……三年ぶりですか?」
暦先輩は頷き、
「そうだな……。んじゃ、そろそろ始めるか」
と言った。
「そうしましょう」
僕の声を受け、暦先輩が部長に言う。
「華、合図を」
促され、部長は始まりを告げる。
「第六試合、始め!」
そして、戦いの火蓋が切って落とされた。
お互いに勢いよく飛び出し、ちょうど真ん中で竹刀と竹刀をぶつけ合う。数瞬の鍔迫り合いの後にお互いに2、3歩離れ、再び竹刀を振るう。暦先輩の振り下ろした竹刀に横から竹刀をぶつけて弾いて軌道を逸らし、返す刀で今度はこちらから逆袈裟に斬り上げる。しかしそれは、暦先輩の横からの一撃に受け止められる。
更に数度打ち合い、再び同時に距離を取る。
ああ、楽しいなぁ!ゾクゾクしてくる。
「…更に強くなってないか、お前?」
暦先輩が呆れた様に言う。
「貴方ほどじゃあありませんよ。そもそも暦先輩、得意なのは格闘戦じゃないでしょうに」
僕も言い返す。
「ま、俺も色々あったからな……」
どこか遠い目をしてしみじみと言う暦先輩。
「それは僕も同じですよ」
そう答え、再び竹刀を構える。暦先輩もそれを見て、竹刀を構え直す。
そして、再びの鍔迫り合い。
「だからこそ、負けるわけにはいかない。そうだろ、竜也!」
暦先輩が鍔迫り合いの状態のまま、蹴りを繰り出しつつ言う。それに対して、
「ええ、全くです!」
応えつつバックステップでそれをかわし、そこから逆に踏み込み、暦先輩の頭部に思いっ切り竹刀を振り下ろす。半身になってそれを避け、そのまま三連突きで牽制してくる暦先輩。また距離を取る。こうして突いてからすぐ引き戻されると、先程春原がやったような隙が殆ど生まれない。
試合を始める前と同じ位置にそれぞれ戻ったところで、暦先輩がまたも口を開く。
「……さて、そろそろウォーミングアップは終わりでいいか、竜也?」
部長達が「え?」という顔をした。……どうしたんだろう?まあいいか。
「はい、そろそろ身体もほぐれて来ましたし」
僕が答えると、
「んじゃあ、そろそろ始めようか」
と暦先輩が言う。…うん、久しぶりにいい運動が出来そうだ。抑え切れない興奮に、思わず唇の端が吊り上がる。
「…本気で行きますよ……?」
「ああ、本気で来……あ、ちょっと待て」
「どうしました?」
「…本気でやりたいのは山々だが、多分お互い派手に怪我しそうだから少しセーブしよう」
「……そうですね」
ま、しょうがないか。お互いに本気で戦えば、少なくとも骨折は免れないだろうし。しかし、どうにも締まらない話ではある。
「んじゃ、改めて。始めようぜ、竜也」
「望むところです。……鈴木竜也、推して参る!」
「来いよ、竜也。俺の今使える総てで、迎え撃ってやんよ。……神林暦、撃滅する!」
そして僕たちは同時に、相手に向かってブーメランの様に竹刀を投げ付けた。