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第4話 リベンジ

「なぁホロス」


「なに? エイン」


 ホロスは四角い板のようなものを手に持ち寝っ転がっている。


「俺はコイツを相手してから何回死んだ?」


「…ああ、ごめん数えるの忘れてたわ」


 ホロスの視線がその四角い板から俺へと移った。


「あのなぁ…」


「ごめんって」


 その四角い板の正体は異世界の道具「スマホ」 ここは世界と世界の狭間。つまり俺達の住んでいる世界の隣にもまた別の世界があるということだ。ホロスは俺達の世界の一部を再現できるのと同様に隣の世界のモノもある程度再現できるらしい。


「でも流石にずっと戦いを見続けるのも飽きるっていうか…」


 ホロスはスマホを置き指を合わせいじいじとしだした。

 お前が始めたことだろとツッコミたくもなるがホロスの気持ちも理解できないわけではない。なにせ既にあの出会いから500年以上経っているのだから──


「はぁ…まぁいいよ。今回はこれで終わりだし」


 俺は倒れている魔物の心臓を刀で刺しトドメを差した。魔物は塵となって消える。今回の敵は体長3mは超える人型の魔物。両手剣を装備しており多彩な剣術を披露してきた。

 それにしてもマジで強かったなコイツ。一体何回死んだことやら。でも剣術で参考にできることは多くあった。


「ホロス、次頼む」


「アンタも少しは息抜きしなさいよ。ほら、こっちこっち」


 ホロスは寝っ転がっていたベッドに座り直し、その隣をトントンと叩き俺も座るよう促してきた。今回戦った場所は遺跡のようなところだがホロスのいるところだけはまた別の空間になっている。床がありベッドがありテレビもある。俺と魔物は戦っているあいだその空間には干渉することはできない。


「こう毎度休ませていいのか? 俺に魔王を倒させたいんだろ?」


「バカね。現実世界に戻ったら傷も疲労も勝手には回復しないのよ。今からちゃんと休むクセをつけときなさい。そうしないとすぐにぶっ倒れるわよ」


 ……ふざけてるように見えてこういうところはちゃんと考えてるんだよな。


「ほら早く! こっちきてテトリス一緒にやるわよ」


 ……やっぱりただ遊び相手が欲しかっただけかもしれない……


◇ ◇ ◇ ◇


 俺は促されるままベッドに座りコントローラーを握ってボタンをカチャカチャと押す。これももはや手慣れたものだ。回線が繋がればオンラインでもっと面白いゲームができるとホロスは言っていたがそこらへんの難しい話はよくわかっていない。


「それでなんで魔王を倒してほしいんだっけ」


 L字のブロックを置きながら尋ねる。


「前にも話したわよね!? そうやって話させて私の集中力を削ごうとして!」


「いいだろ。聞いたって言ってもそれも何十年も前の話だしおさらいってことで」


 今度はT字のブロックを置く。


「はぁ、仕方ないわねー。今の魔王を生み出した原因が私にあるからよ」


 ホロスはI字のブロックを差し込んだが一段分しかブロックが消せなかった。しかしそれでも話を続ける。


「魔王が隣の世界の人間、異世界人というのは話したわよね? それに異世界人はあなたと同じく魔力を全く持っていないということも」


「ああ、たしかこっちの世界の人間は魔力器官があって、あっちの世界の人間にはないんだっけ?」


 俺はI字のブロックを差し込み4段を一気に消す。


「げにゃ!? やっぱり覚えてるじゃない!? ズルいわよ!」


 おじゃまブロックが大量に降り注ぎそれに驚いたホロスは変な声をあげた。


「それでなんで魔力のない異世界人をわざわざこっちに呼んだんでしたっけ?」


 何故かは覚えているが更に集中力を削ぐために質問を続けた。


「それは魔力のない人間には『祝福ギフト』を授けられるからよ。魔力を持っている人間は容量がいっぱいで『祝福ギフト』を授けるスペースが残ってないからね」


 『祝福ギフト』とは魔力、魔法とはまた違う特異な力だそうだ。魔法は()()()()()火や水、雷といった自然物を再現し操るものだが『祝福ギフト』はそれとは違い概念にまで作用することがあるそうだ。


「それで先代の魔王を倒してもらうために異世界人を呼び出して『祝福ギフト』を授けたまではよかったんだけどね。その『祝福ギフト』の内容が悪かった」


 ホロスは必至にブロックを消しながら話す。


「“魔族と魔物の支配”。これが今の魔王が持っている『祝福ギフト』よ。この力を使って今の魔王は魔族と魔物に命令することが可能だし思考誘導することも可能。そして力や寿命を徴収することも可能となった。これが現実世界での千年前の話」


 ちなみに『祝福ギフト』の内容はホロスが指定できるというものでもなかったようだ。運悪く現魔王にその『祝福ギフト』が発現してしまった。上手く使えば魔族を殲滅することも容易いだろうに異世界人は魔族側に君臨することを選んだ。だがその選択は理解できないものでもない。殲滅してしまったら支配できる相手がいなくなってしまうのだから。

 しかしそれで人間側と敵対するというのは謎だ。魔族を支配する理由はあるが人間と敵対する理由が見当たらない。こちら側の人間に思い入れがないからか?


「そして私は強大な力を持ってしまった魔王に封印された。その封印された場所に通りかかったのがエイン、あなたというわけよ。本来あそこは魔力をはじく結界が張って合って認識することも困難なのだけれどもあなたは魔力がないからかしら? その結界をすり抜けてしまった」


 これが俺に力をつけさせている理由らしい。責任を取って魔王を倒したいが封印され力を制限された自分では不可能。ならばせめて魔王を倒せる力を持った人間を自分で育て上げよう。要はそういうことだ。


「なるほど。完全に思い出した…よっと」


 T字のブロックを回転させながらはめ込む。


「ああっ!?」


 ギリギリで持ちこたえてたホロスのブロックが溢れだし決着がついた。このゲームをやり始めた頃はホロスにボコボコにされていたがいまや逆の立場になっている。

 こんな感じで女神とは思えない部分もあるが女神としての責任を果たそうとしているのも事実だ。俺はそんなホロスの力になりたいと思っている。


「もうっ! ズルいわよ!? 今のはノーカンよノーカン!」


 ホロスは悔しそうな表情で訴えた。


「だからもう1回!!」


 いや、単に負けず嫌いなだけかもな──



    第4話 リベンジ


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