第21話 話が早けりゃ結論も
私は魔法師ギルド ズウェルテ支部所属の受付嬢ノーリス24歳! 勤続年数8年! そんな私ですが私史上一番のピンチを迎えています……
「約束を守らないのは人としてどうかと思うわよ」
「同意見だ」
先ほどとんでもない戦いを見せた二人が私に詰め寄ってきてしまいました……!
「はわわわわわ」
まさかガデロンさんとリサさんがこの子たちに負けるなんて思ってもみなかったんです……。ちょっとリヒトさんがしつこかったから本物の二等魔法師の力を見せたら引き下がるかなって、ただそう思っただけなんです……。
どうします? このことを素直に支部長に報告? いやいや勝手にウチのギルドの魔法師と一般人を戦わせたなんて言ったらとんでもなく怒られるに決まってます…! いや怒られるだけならまだマシです……これは……
……下手したら、クビ……!!
「あば…あばばばばばば」
「あーあ、ノーリスさん壊れちゃったよ」
一等魔法師のフェルドが見かねて声をかける。
「お前も倒したら認めてくれるかな」
エインは鞘を触りながら言葉を返した。
「勘弁してよ。というかそういう問題ではないと思うし。少なくともガデロンとリサに勝てた時点で十分実力は示せたでしょ」
「そうよ~。だから怒らないでください。ホロス様~!」
どういう心境の変化かリサがホロスに擦り寄る。
「なんか様で呼ばれるのは意外としっくりこないわね」
「じゃ…じゃあホロスちゃんって呼んでもいいかしら…?」
「え~? ん~、まあいいわよ」
なんだこのやり取り。
「ん~っ! やっぱりかわいいわホロスちゃん!」
そう言いながらリサはホロスの頭を撫でようとする。
「撫でていいとはいってないわよ!」
ホロスはそれを拒絶。そして俺の背中に隠れた。
「そんなところも猫みたいでかわいいわ!」
あんなことされてよくそんな態度とれるな。今日一番の驚きだよ。
「それで結局俺達はギルドに入れるのか?」
「支部長には俺達からも頼んでおくぜ。支部長だってお前らほどの強者をみすみす見逃したくないだろ」
ホロスに近づこうとするリサを引き留めながらガデロンが話す。
なるほど二等魔法師と一等魔法師からの推薦か。それは心強い。
「そういえば支部長今なにしてるんスかね」
リヒトのその言葉の直後上から謎の男の声が
「お、ちょうど俺の話してるな」
その男は二階の窓から植物の蔦をロープのように使い降りてきた。
「いよっと」
着地をするとその蔦は消える。
「なんでわざわざ上から来たんですか支部長」
「なんだぁ? 文句あるのかフェルド。そりゃかっこよく登場したいからに決まってるだろうが」
あごひげの生えた中年の男。こいつが……
「よう、エインとホロスだったか? 事情は粗方受付嬢から聞いた。おっと当然あそこでアホみたいな顔をしている奴からじゃないぞ」
フェルドから支部長と呼ばれた男は受付嬢ノーリスに顔を向けた。
「お前が支部長か」
「自己紹介がまだだったな。俺は魔法師ギルド ズウェルテ支部の支部長、ワルドだ。お前たちの戦いは見させてもらった」
上から感じていた視線の正体はこいつだったか。
「ご丁寧にどうも。それで俺達はギルドに入れてもらえるのか?」
「おう、入れ入れ! 本部には俺から話を通しておく。まあ文句を言う奴もいるかもしれんがお前らなら腕っぷしで黙らせられるだろ!」
なんかめちゃくちゃなこと言ったな。そんなこと言う奴が支部長でいいのか?
「あ、あの~、しぶちょ~……」
「お、やっと口を開いたかアホ受付」
「エインさんとホロスさんが強いってわかったのは私がガデロンさんとリサさんと戦うことを勧めたからですよね…? だから…その……」
受付嬢ノーリスは自らの保身のため言葉を綴る。
「確かに実際に戦うところを見れたのはよかったよ」
「じゃ…じゃあ……!」
「でもお前には普通に処分を下す」
その言葉を聞いたノーリスは途端に青ざめ、喉の奥から言葉にもなっていないおかしな音を出す。
「当たり前だろ。まずは俺に話通せよ。本当はこいつらが口先だけの弱っちい奴らで大怪我でもさせてたらどうするつもりだったんだ」
「それはそのぉ……ちゃんとガデロンさんとリサさんには手加減してもらうよう頼んでてぇ……」
ノーリスは助け舟でも求めるかのように二人の方をチラッと見た。
「そうだガデロン、リサ、お前らも勝手に戦ったから同罪な」
「なっ!?」
「私たちは頼まれただけよ!」
助け舟ごと沈められてる……
「あはは、ドンマイ二人とも」
フェルドは笑いながらガデロンとリサに励ましの言葉をかける。
「俺に報告せずただ見ていただけのお前もアウトだな」
あっちの陣営勝手に壊滅した……
「え~、僕もですか? というか処分ってなんですか」
フェルドは不満げに声をあげる。
「これから壊滅の報告があったルイグ周辺の調査を始める。忙しくなるぞ~。お前らはその調査の担当をしろ」
「ふ…ふぅ…クビじゃなくてよかったです……」
安堵の声を出したのは受付嬢ノーリス。
「やっぱお前は減給くらいはしとくか」
「一生懸命働くので勘弁してくださ~い!!」
「じゃあさっそく働きにいけ。フェルド、お前たちもだ」
「はーい」
こうしてフェルドたちは去っていった。約一名名残惜しそうにしている奴はいたが……
「ホロスちゃ~ん! 次は…次は頭撫でさせて~!」
「うえっ…」
◇ ◇ ◇ ◇
俺たちは変わらず稽古場に残っている。しかし喧しい奴らがいなくなったからだろうか。この稽古場も先ほどよりも広く感じる。
「んで、本題だがお前らは魔王の居場所が知りたいんだったな」
支部長ワルドも引き続きこの場にいる。それにしても話が早くて助かる。
「まあ、結論から言うか。魔王の居場所は……わからん。というか魔王の目的も正直よくわからん」
……うーん。
「じゃあギルド入るのやめます」
「ちょっ…ちょっと待て結論を出すのはまだ早いだろ!」
だってこれギルドに入る意味ないだろ。
第21話 話が早けりゃ結論も




