第14話 足元にはご注意ください
「とは言ったものの俺飛行型の相手は苦手なんだよな」
「そうよ! 普通は弓を使うリヒトがこっちと戦うべきなのよ!」
正論だが因縁の相手とあらば自分で決着をつけさせてやりたい。
「ガルグ、少しその二人の相手をしてやりなさい。だが殺すなよ」
「キィーッ!!」
ガルグと呼ばれる魔物はひげの魔族の言葉に返事をするように鳴いた。
そして風を纏わせた大量の羽根をエイン達に向けて飛ばす。
「ちゃんと遠距離攻撃持ちか。厄介だな」
「だから言ったでしょう」
「まあなんとかなるだろ」
エインは刀を抜き、ホロスは手を前にかざす。
「“迎梔子”」
「“盾”」
ガルグから放たれた攻撃をエイン達は易々とはじく。
「というかあの魔物初めて見たな」
「多分この千年間の間で変異した魔物ね。『狭間』では私が封印される前の魔物しか再現できなかったから」
「へえ~。そんなのもいるのか」
二人は引き続き攻撃をさばきながら会話を続ける。
「しかしどうしたもんか。魔力切れまで粘ってもいいんだがあまり時間は掛けたくない。…ホロス、あの閉じ込めるやつ使えるか?」
ホロスはやれやれという顔をし魔法を唱えた。
「“密閉”」
しかしガルグはそれを空中にて回避する。
「ダメね。あいつもあなたと同じで勘がいいタイプみたい」
「……そうか」
「あっ! いま使えねーって思ったでしょ!!」
「思ってない。ただ当てられないのかと思っただけだ」
「一緒よ!! ちょっと『千偽理』貸しなさい! 私の本気見せてあげるから!!」
ホロスは「千偽理」に触れるとホロスと「千偽理」は白い光に包まれる。そして──
「……!? ホロス!? どこいったんだ!?」
ホロスはエインの目の前から消えていた──
『ここよ。ここ』
「いやどこだよ」
姿は見えないのに声だけは聴こえる。
『「千偽理」の中よ。やっぱりできた。これは私の“分け身”だから一時的な同化ができると思ったのよ』
「千偽理」との一時的な同化……。そんなことができたのか。しかし状況は変わってないと思うが……
『私この状態でも魔法は使えるわよ』
棒立ちになっているエインを見てガルグはここぞとばかりに羽根を飛ばし攻撃をしかける。
「……! なるほどな」
「『“盾”』」
二人の声は重なり盾は展開された。そしてその盾がガルグの攻撃を防ぐ──
──のではなく
「空中散歩としゃれこみますか」
盾は空中にまばらに配置されそれを足場にエインは空を駆け上がった──
「魔法使いになった気分だ」
『魔法は私の意思でしか発動できないけどね』
依然としてエインの肉体に魔力は通っていない。しかし盾はエインの意思通りに発動する。それはホロスが寸分の狂いもなくエインの意思を汲み取った結果によるもの。
千年の積み重ね── それが二人の想いを一致させた──
「ははっ、空は広いなあ! ホロス!」
エインはガルグの攻撃を避けながら天を舞う──
『そうね! エイン!』
二人はガルグを見つめ──
「独り占めは卑怯だな」
『独り占めは卑怯よね』
声は重なる──
ガルグはその姿に蹴落とされるも必死に攻撃を続ける。
だがその全てをエインは叩き落す。盾はあくまでも足場。エインはガルグとの距離を大きく詰める。
「見上げる経験は初めてか?」
エインは既にガルグの頭上にまで迫っていた。そして刀を振り下ろす──
「……!」
しかし天空の覇者ガルグ。それを紙一重で躱す。攻撃が空ぶったエインは地上への落下を始めた。その姿を見たガルグは笑みにも似た表情を浮かべる。
『“盾”』
直後生成されるはガルグのすぐ下。
「顔を上げてくれて助かるよ──」
“椿鬼”──
「おかげで首が斬りやすい」
落下を始めたエインであったがガルグのすぐ下に生成された盾を足場とし斬撃を放った。
首を斬り落とされたガルグは地上への落下を終える前に塵となり消える。
「無事ノーダメで勝てたな。さてリヒトの方は…」
エインは盾に乗ったままリヒトの様子を伺おうとする。
『…あの…エイン……。言いづらいんだけど私この状態そろそろ限界かも……』
「ちょっ…!? ちょっと待て! まだ盾は解くなよ! この高さは流石にまずい…!」
『ああ、やばい、限界』
「すぐ降りるからもう少しだけ我慢してくれ!!」
第14話 足元にはご注意ください




