第11話 教えて、ホロス先生
「魔法師ってなんだ? 魔法使いとは違うのか?」
「知らないんスか!? でもそっか。お二人ともギルドには所属してないんスもんね」
そう言ってリヒトは俺達の手元を見る。
見てわかるものなのか。
「ホロスは知ってるか?」
「しらなーい」
ホロスのこの世界の知識は基本的に千年前で止まっている。千年前に魔王に封印されてからはなんとなくでしかこの世界のことを把握できなかったと以前聞いたことがある。
「魔法師は基本的に魔法師ギルドに所属している冒険者のことを指します。冒険者の仕事は魔力、魔法を用いての生態調査、環境探索、魔物の撃退とかです。転じてギルドに所属せずとも魔力、魔法を用いて戦いをする人も魔法師と呼ばれることがあります。騎士団の連中を魔法師と呼ぶ人もいますね。逆に魔法が使えても戦闘をしないで暮らしてる人は単に魔法使いと呼ばれることがほとんどですけどそこらへんの基準は曖昧ですね」
──この世界の人間はエインのような例外を除き全員が魔力を保持している。しかし必ずしも魔法を使えるわけではない。向こう側の世界の例えになるが大多数の人間はサッカーボールを蹴ることができる。しかし蹴れたからといってリフティングができるとは限らない。リフティングはいわば蹴った先にある応用の技術。魔法も同様、魔力を操った先にある応用の技術なのである。
だがリフティングができても必ずしも試合で活躍できるとは限らない。逆にリフティングが下手、あるいはできずとも他の技術で補い試合で活躍する選手も存在する。この世界に置き換えると魔法が使えても必ずしも戦闘に活かせるというわけではなく、逆に魔法が下手、あるいは使えずとも魔力操作のみで戦う人間もいるということになる。
「つまりホロスは魔法師と呼ばれることになるのか」
「ッスね! ギルドに所属してなくてもあれだけ魔法で戦えれば魔法師と認識する人が多いと思います」
「なあ、それなんだがなぜ俺達がギルドに所属していないとわかったんだ」
「それはこの指輪をつけてないからッス!」
そう言ってリヒトは左手を俺達に見せてきた。その中指には黄色い宝石がはめ込まれた指輪がある。
「この指輪、魔法指輪って言うんスけどこれはギルド所属の冒険者にだけ配われるものなんス」
だから俺達の手元を見たのか。
「黄色い宝石がはめ込まれているのね」
「色はランクによって変わります。オレはまだ四等魔法師なんで黄色ッス……」
リヒトは落ち込みながらも説明を続けた。どうやら冒険者には五から一のランクがあるらしく数字が小さいほど強さと実績があるとのことだった。またランクによって宝石の色が変化し五等が緑、四等が黄色、三等が赤、二等が青、一等が白となるらしい。
「つまりリヒトは下から2番目の強さってことね」
「うっ……、そういうことになります……」
わざわざ言ってやるなよ。
「オレ、魔法使うの下手くそなんス。ちょっと見ていてください」
リヒトは目を瞑り集中している様子だ。少しすると手のひらに小さな火が出現する。
「この通りこの程度の魔法しか使えないんス。当然実践で使えるわけもなく魔力を体と武器に纏わせる戦い方しかできないんスよね。もっと魔法を上手く使って戦わないと……」
リヒトは手に魔力を集中させ火を更に大きくしようとする。
「本当に下手くそねー」
「…だから言ってやるなよ」
俺はホロスにチョップをする。
「いたっ! なにするのよ!」
「かばってくれてありがとうございます。エインさん。でも事実だからいいんです」
「……あなたたち何か勘違いしてないかしら」
ホロスが不服そうな目で俺達を見る。
「私が言ってるのは単に力の使い方が下手って話よ」
「……どういうことッスか?」
「例えば魔力のないエインが魔法を使って戦おうとするのは無意味ということはわかるわよね」
「……まあそれは……」
「そうスね……」
「人には得手不得手があるのよ。リヒト、あなたはいま不得手で戦おうとしている」
ホロスはリヒトに指を向ける。
「私が教えてあげるわ。あなたがするべき戦い方を──」
第11話 教えて、ホロス先生




