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S先生の怖い話

作者: 昼中
掲載日:2026/02/12

 私が中学生だった頃の担任、S先生の話だ。

 彼は熊のような見た目だったが、茶目っ気たっぷりの愉快な教師であった。

 授業時間が余った日に、S先生はこんな話を始めた。


「こんな天気の悪い日やから、今から先生が怖い話をします。ちょっと、電気消すで。

えー、これは先生がまだ学生の時の話です。

先生はその頃、演劇部に入ってました。僕が居った学校の演劇部には年に一回合宿があったんやけど、その合宿中に起きたことです。

その合宿場はそんなに広いところではなかったし、ちょっと古い木造の建物やった。

僕は合宿なんて初めてやから、演劇の練習や部活のメンバーたちとご飯を作ったりするのが楽しくてしょうがなかった。

部員は僕を含めて六人しか居らんかったけど、みんなとても仲が良かったしな。

寝る時は女子も男子も混ざって、合宿場の一番広い部屋に布団を敷き詰めて雑魚寝した。

修学旅行みたいに夜遅くまで喋って、僕はいつのまにか寝てしまったんや。


ふと夜明けに目が覚めた。

一瞬、自分が今どこに居るのか忘れとったけど、すぐに『あ、せや、合宿場に居るんやった』と気づいた。

起きたついでにトイレに行こうと思って僕は起き上がろうとしたんや。

せやけど、僕は動けんかった。


部屋の真ん中にな、真っ白な何かが居ったんや。

説明するのが難しいけど、頭の上から白いシーツをすっぽり被ってるみたいな幽霊、あるやろ?

一瞬、そんな幽霊にそっくりやと思った。

天井に届くぐらい背が高くて、足は無いねん。

シーツみたいな裾がゆらゆら揺れとるだけで、その下には何もあらへんかった。

だけどなぁ、頭が変なんや。

顔は無い。のっぺらぼうみたいに全部真っ白。

でも、頭の途中が……鼻があるぐらいの位置から真横にすっぱり切れて上下に分かれてるんや。

せやから、お椀をひっくり返したみたいな白い塊が一番上で浮いとる。

で、その少し下に離れて、ながーい下の部分がぷかぷか浮いとるんや。


僕はそれを見て、布団の中で心臓が凍りつくかと思った。

慌てて目をつぶって、寝たフリするしかできんかった。

その瞬間───」


 ダンッッッ!!!


 S先生は大きな手のひらで教卓を叩いた。

 女子生徒の悲鳴が上がる。

 先生はもう一度強く教卓を叩くとニンマリ笑う。


「びっくりしたぁ?この話はこうするのが面白いんや。


──こんな大きな足音がしてな。

白い何かはゆっくり部屋を回りだした。足は見えへんのに、建物が震えるほどの音を鳴らして僕らの合間を一歩ずつ移動するんや。

僕は布団の中でガタガタ震えながら、(どっか行ってくれ!)と念じとった。(何でこんなに大きな音がするのに先輩たちは起きひんのやろう)(誰か助けて!)そんなことばかり考えた。そして、その白いお化けはある女の先輩の布団の横で立ち止まり、ぐうううっと体を屈めて顔を覗き込んで、ふっ、と消えた。

朝になって、僕は白いシーツお化けの話を部員にしたんやけど、みんな反応が薄いから『ホンマに見たんです!』と必死に説明したら『知っとる!怖いから言わんといて!』って怒られたわ。

みんな寝とったんやない。

全員起きてたけど、怖すぎて寝たフリしとっただけやった」


 そう言った先生は怖がる生徒の見て満足そうに笑い、そして真剣な顔をする。


「それでな、この話はちょっと続きがあるんや」


「僕は何年もしてからこの話を友達にしたことがあるんや。

友達……Aくんって呼ぶことにするけど、その日はAくんとドライブして、日が暮れた頃に暗い道で車を止めて休憩しとった。車内でジュースを飲みながら、僕はこの話をしたんや。

Aくんはえらい怖がりな奴でな、お化けの話なんて大嫌いやからリアクションが面白そうと思ったんや。案の定、白いオバケを俺が見た所でAくんはギャーギャー悲鳴を上げて怖がった。

『そんな話は聞きたぁない!』『やめろ!』ってすごい騒ぎようやった。せやからその姿を見て僕は思いついた。


(せや、オバケの足音がする場面で車のドアを叩いたろ!)


僕はウキウキしながら、『そして、僕が寝たフリをしとると……』と言って、車のドアを内側から叩いた。さっき黒板を叩いたみたいに、思いっきりな。

バン!と大きな音がして、Aくんは『ぎゃああ!』と情けない悲鳴をあげたんや。

こりゃオモロイ。

僕はもう一回ドアをバン!って叩いた。

Aくんはもうパニックや。楽しくなってきた僕はもう一度ドアを叩こうと手を振り上げて───」


 バンッッッ!!


 バンッッッ!!!!!


 S先生は振り上げた手と反対の手で後ろの黒板を二回叩いた。


「……二回、外側からやった。

僕が座っていた助手席の扉と、天井を一回ずつ、すごい力で外から叩かれたんや。

外には誰も居らんかった。

Aくんは叫び声もあげずにエンジンをかけると、そのまま猛スピードで車を走らせた。

明るい街中に着いてから、Aくんにそれはもう怒られたわ。『二度とやるな!』ってえらい剣幕やった。


えー、それ以来、僕はこの話はAくんにはしてへんけど、生徒たちにはこうしてたまに話してます。

この話をしていれば、またAくんの時と同じように何か音がするんじゃないかと思っているんです。


残念ながら、今回は何かにドアや壁や窓を叩かれたりしませんでしたね。


みなさん、良かったら誰かにこの話をしてみてください。

足音がするシーンでは僕がしたように壁や机を叩いて、聞いてる人を脅かしてみてください。

外側から何かに叩き返されたら、ぜひ先生に教えてほしいと思います。


相手があまりにも怖がりやと、怒られるので気ぃつけてください」

ノベルアップに投稿したものを加筆修正しました。

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