Prologue
ステア王国郊外、アミウ河のほとりに、一人の男がいた。
その男は切株に腰掛け、無言で刀の手入れをしていた。
太股に置いた刀を特製の布で磨く。満足のいく仕上がりになると、ひっくり返し反対側に手をつける。
「・・・―――ん?」
作業にも没頭していた男が手を止め、空を仰いだ。
ゆらゆらと灰色の空に渦巻き状のなにがが浮き出ている。
「――・・・なんだ、あれ・・・?」
フードからのぞく瞳を細め睨むようにそれを眺める。
能力を使って調べようかと一瞬考えたが、すぐに打ち消した。
「・・・俺には関係ない、か」
そう結論付け、得体の知れない空から視線を外し、中断していた作業に戻る。
男は知らない。
その渦が、徐々に自分に近づいついることに。
そして、不幸なのか幸福なのかわからない"モノ"を自分に与えてくれることを。
ソレが自分にとってどんなに大切なものになるのかを。
知らないままの方が良かったと思ってしまう程の感情が溢れ出す原因をその身に運び込むことを。
男は知らない。
今はただ目の前にある刀にだけ集中していた。
. そう結論付け、得体の知れない空から視線を外し、中断していた作業に戻る。
男は知らない。
その渦が、徐々に自分に近づいついることに。
そして、不幸なのか幸福なのかわからない"モノ"を自分に与えてくれることを。
ソレが自分にとってどんなに大切なものになるのかを。
知らないままの方が良かったと思ってしまう程の感情が溢れ出す原因をその身に運び込むことを。
男は知らない。
今はただ目の前にある刀にだけ集中していた。
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