H-3 メディアとヨーク
俺はこれでもBランクのハンターだ
大物を狩ったこともある
やんちゃだった頃の話だがな
普通は怖がって遠くから見てるもんなんだよ
高ランクのハンターなんてのはさ
だがこの現状はどうよ?
ハンターギルドのテーブルに酒瓶がぎっしり載せられている
そりゃドンチャン騒ぎは好きだぜ?
これでバインでボンの女が居れば夜通しだって飲むっての
しかし目の前のこいつはなんなんだ?
見た目は確かに美人なんだ、
でも中身がやべぇよ、
新人訓練の時に床にヘバッタ奴を邪魔だとか言って
ヘビーハンマーで壁まで飛ばしてた教官以来のヤバさだぜ?
ベロンベロンに酔っ払ったグリグリ女が
俺を放してくれねぇ。
「ねえ、あんたBランクなんでしょ?」
もう何回目かわからない質問がまたくる
「私Aランクになるんから」
「おーなれなれ、早くなれ
応援してるよぉ」
俺も何回目かわからねぇやりとりに
投げ捨てになりながら返した。
こいつは何をしてぇんだ?
今度会ったら犯すと決めてたがやめた
起きたらちょん切られて炙りソーセージを
ハムハムさせられる気がしたからな・・・
現役のうちは神官目指すつもりはねぇよ
しっかしどうなってんだ。
こんな辺境の村にハンターが20人近くもいるのは異常だぜ
まあ半分くらいは今、床とキスしてるけどな。
野犬が増えたって依頼でこの人数はありえねぇ
多くて10人だろ?普通なら
隅っこで飲んでるヤサ男はどう見ても騎士クセェし、
この依頼今となっては、かなりキナくせぇ・・・
「さーってと俺は宿屋に戻って寝るわ
マスター、支払いはこいつらがする!
財布漁って大丈夫だぜ」
俺は酒場を出てから宿屋には向かわずに
村の出口に向かった。
出口には騎士がふたり立っている。
やべぇな、クセェ、クセェよ
俺は村の馬鹿みたいたけぇ囲い柵の周りを歩いたところで
後ろから声を掛けられた
「ねえ、あんた」
俺はゾッとしたね、思わず傷口押さえたぜ
「ブッハ、脅かすんじゃねぇよ
またグリグリされるかと思ったじゃねぇか」
「はあ?」
メディアはバカでも見るような目で俺をみやがった
「ねえ、この村なんで結界張られてんの?」
「あ?」
俺は驚いたぜ?
「お前、見えるのか?」
「まあ、ちょっとならね」
俺はちょっと考えてから聞いてみた
「どう思う?」
「どうって?これのこと?」
「ああ」
「結界でしょ?」
「村全部だと思うか?」
「そうかも」
「まじか・・・」
いよいよヤバそうだ。
「酒場戻んぞ」
「えー、もう眠いんだけど」
「うるっせぇ、黙ってついて来い」
酒場までは全力で走った。
あいつも軽々付いてきてた。
ウェイトないやつはずりぃぜ。
酒場のドアを開けて俺は叫んだ
何人かジョッキで手を振ったが
大多数は寝てやがる
俺は喉を窄めて低い声を作る準備をした
深い深呼吸をして、一気に吐き出す。
「床に寝てるやつは休憩か?
軟弱者には喜びのハンマーをくれてやる
5つ数える前に立て
5つ・・・
4つ・・・
3つ・・・
ふたつ・・・
ひとつ・・・
貴様らはハンターか?」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
「サー、イエッサー」
いやぁ、ほっとんど起きたよね
先輩パナイって思ったわ。
起きたやつを全員ドタマ小突いてから
まだ寝てる奴は鳩尾を蹴って起こした。
「オメェら、
寝起きで酒も抜けてねぇと思うが
マジな話をする
死にたくねぇなら耳かっぽじっとけ」
「兄貴、何が始まんだ?」
「全裸パーティとかじゃねぇ?」
「ギャハハ、俺もやるぜ!」
俺は合掌の音をデカく響かせた
「この村は結界が張られてる
多分全域だ」
低ランクどもがまた騒ぎだすが
俺は声を張る
「結界ってのは閉じ込めるためにやるんだぜ
だからヤッベェのが村の中にいる
出口には騎士っぽいのがいるが
そいつも結界の外側だ
多分討伐するまで外の騎士どもは
俺らを出す気がねぇ」
こいつらも
「おい、なんだそりゃ」
「なめたことしやがる」
と反発してる。
「まあ、俺はそうみてるわけなんだが、
あんたどう思うよ?
騎士サマ」
そう言って隅っこにいた男を睨みつけた。
そいつは鼻で笑ってから立ち上がり、
こっちを向いて口を開いた。
「その通りです、さすがは英刃のヨーク
二つ名持ちは伊達ではないようだ」
後ろめたさなど微塵も無さそうな優男は
俺の眼前までゆっくり歩いてきて言った
「では作戦を考えましょうか」
その瞬間、俺の脳は沸騰した。