E-20 カスタジェ 長老たちの輪
編み物を止める様相を見せないミレを片目に、カスタジェは湖での出来事を振り返っていた。
(フォルランを起こす?)
(フォルランを殺す?)
(ダメなら逃げる?)
・・・・・・
(もう冬になる、外を知らぬ我らが生きられるのか?)
(どれだけの者が枯れ落ちるのか・・・)
(あれの言う言葉を何処まで信用する・・・)
カスタジェは茶を傾けながら、手を動かし続けるミレを眺めた。
「それは何を編んどるんじゃ?」
ミレの視線は編み物に向かったまま動かなかった。
「あんたに関係あるかい?」
カスタジェは不機嫌そうに顎に手をつきながら窓の方を向いた。
「別に興味ないわい」
不服だったのか、ミレは少し顔を上げてカスタジェをじっと見つめた。
「ならなぜ聞いた?」
少しの間を置いて、カスタジェは少し下顎を出しながら答えた。
「さあの」
ミレは溜め息を隠さず、また編み物に戻った。
編まれていく糸がスルスルと静かに音を立てながら、時間は過ぎていった。
それから10分ほどがたった頃、土を踏む足音が聞こえてきた。
徐々に大きくなっていくそれに耳を立てていると、バスカーがドアから姿を現した。
バスカーはすぐにカスタジェらを見つけ、遠慮ない声量で挨拶をした。
「おう、待たせたか?」
カスタジェはさっきまでの姿勢のまま、呆れた顔できいていた。
「物見に出たんじゃろ、どうだった?」
バスカーは自分の指定席へと移動しながら口を開いた。
「うむ、上に着いた頃にはもう止んでおってな。
見えんかった。続きがあるかと思って待っておったのだが、それも無かったぞ」
バスカーが席に腰を下ろすところで、僅かに空気の漏れる音がミレのいる方から聞こえて、二人は振り向いた。
「おまえ、いま笑ったか・・・」
また五月蝿くなると思いカスタジェは顎を手に沈ませて窓の外へと目を移した。
(飽きもせずまあ毎度毎度、付き合う方の身にもなれと・・・)
「何のことだい?」
「おまえ・・・物見に出るのがおかしいか?」
「なんのことやら」
「長老として異変があれば確認するのが当然だろうが」
ミレはじっとバスカーを見つめてから言った。
「で、見えたのかい?」
バスカーは腕を胸で腕を組みながら顔を逸らした。
「見えんかった」
「そうかい、ザマないね」
「おまえ・・・何もせず待つだけなど出来るか!」
「守衛隊が動いてんだから、待ってりゃいいのさ」
「それでも、待つだけなど、私には出来ん!」
「まだ若木のつもりだからそうなる、いい加減自覚したらどうなんだい?」
「私は・・・まだ動ける、何がいけない!」
「そうかい、それならそうでいいんじゃないか?」
「この、熱い茶でもかけてやろうか」
「・・・」
バスカーはテーブルを見て僅かに止まってからミレを見た。
「自分で淹れな」
ミレがそれだけ言うと、バスカーはふんと鼻を鳴らして水場に向かっていった。
手をついていた顎はずり落ちて頬まで落ちそうになりながら、カスタジェは思った。
(面倒ごとこそ幸いの種というが、儂にはさーっぱりわからんの)
誤字を修正しました。




