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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
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E-2 カスタジェの祈り


カスタジェは天井のくり抜かれた古木の中、石像に祈りを捧げている。

昼に祈り、夜が明けて朝陽が顔を見せても次の夜まで祈りは続く。


(もう終いにしたいところだが、まだあやつに背負わせるわけにはいかん)

(穢れ払いはまだしも、あやつに”引き受け”なぞさせられん)

(むはっ、しんどいしんどい)


次の空が暗くなった頃

カスタジェはよろよろと立ち上がり、着衣の襟を持ち上げて瘴気に冒された右肩を覗く、

「やはり広がりが早い、間に合うじゃろか・・・」

上空を見上げると燦然と煌めく星の海が見える。

身体ごと溶け出して吸い込まれるような美しい星空だった。

カスタジェは頭を向け直し、出口へと向かう。

「べヘルの星はもう少し近づいた方が綺麗じゃの」

そう呟きながら社を後にする。


言葉を紡ぎランタンに火を灯す。

社を出てから坂を登り、一本樹を右に曲がるとカスタジェの巣についた。

室内からは灯りが見える。


ドアを開けて室内に入る。

中にはフーヴェルがグシャグシャに整頓された書物置き場の椅子に掛け、眠っていた。

「風邪を引くし、背筋も曲がってしまうからやめろと言っているんだの・・・」

ぼやきながらカスタジェはソファに放ってあるブランケットを拾い上げ、フーヴェルの肩に掛けた。

寝息が聞こえる。


「もう寒いというのに、暖炉の火もつけんで、全く

 儂に寝ずの番でもさせる気かのう」

カスタジェがボソボソと言葉を呟きながら暖炉に薪を2つ投げ込むと着火した。


「そろそろ、ここに来させるとまずいかもしれんのう・・・」

椅子で寝息を立てているフーヴェルに目をやってカスタジェは頭を掻いた。


カスタジェの身体は悲鳴をあげている。

「ぐ・・・ぬぬ・・・」

日々身体を内側から焼かれるような痛みがカスタジェを襲っていた。

「祈りの後は一段とキッツイのう」

葉たばこを取り出して口に咥え、煙草の先端に指先をかざし、ぽつり呟くと煙草に火が灯る。

紫煙を燻らせると少し頭がぼんやりした。

これは痛みを和らげる為の混ぜ物の特製品である。

カスタジェは鼻歌を歌う

「高きべヘルの空の下

 春には森へ出かけよう

 ふきの芽探して歩めや歩め

 持って帰って揚げて食え

 苦味がよいよい

 酒もよさこい

 歌えや踊れ

 こっそりティティスも顔を出す」



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