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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
51/67

N-16 ゼマン ドーフマン商会の一室にて

ゼマンはドーフマン商会に滞在していた商人モルチッヒと会話していた。

内容は貧民街と奴隷についてであったが・・・


モルチッヒは強張った表情を徐々に崩し、

上体を起こしながら口角を上げていった。

「神官様は、すごい冗談をおっしゃいますな」


ゼマンの表情は変わらない。

「冗談は半分だけです。

 奴隷の値が上がっているらしいと耳にしたもので、

 是非モルチッヒ殿のご意見をうかがえればと」


モルチッヒは一瞬だけ目を閉じた。

「先に言っておきますが、

 私は奴隷商ではありませんし、第一、資格がありません。

 それでも宜しければになりますが・・・」


ゼマンは頷いた。

「もちろんそれで構いません」


「わかりました」

モルチッヒは淡々と語り出した。

「私が仲買人だとすると、まず男性は購入しません。

 管理監視する人間を別に雇う必要が出ますからね。

 私の商会がある程度大きな組織だとして、

 奴隷を拘束できる閉鎖空間を用意していたとしても、監視員は必要になります。

 投資額に満たず死亡する可能性すらある。

 それなら最初から廉価な従業員なり工員なりを使う方が良いです。

 逃亡の危険は女性奴隷の場合も同様ですが、

 こちらは手元に置かずに娼館に払下げることになるでしょうから

 娼館が目に留めるほどの高級娼婦が対象です。それなりの女性では寧ろ損益が出ます」


ゼマンはモルチッヒの目をじっと見つめた。

「では、奴隷の労力は現状不要だと?」


モルチッヒは小さく首を振った。

「不要、とまでは申しませんが、購入して手元に置くにはリスクに見合いません。

 後払い方式であれ買い切りであれ、従業員とした方がリスクが低いですから。

 私が鉱山を所有する貴族だったなら話は別ですが」


ゼマンが口を開く

「私も概ね同意見です」


モルチッヒは考えながら呟いた、

「ナーゲンは厳しい状況下にありますし、奴隷が必要な鉱山も碌にない。

 城や街、道路や灌漑を新たに工事する話も聞いていません・・・」


モルチッヒは額に手をあてながら眉に皺を寄せ、目の前の神官を見つめた。

「なるほど。確かに、奴隷の価格が上がる理由がない」


ゼマンは頷き、話を続けた。

「だが実際、奴隷の価格は上がっている。理由はなんだと思いますか?」


「そうですね・・・」

モルチッヒは手を額の前で重ね合わせがら暫く思案していた。


そのまま少し思案してから、やがて重そうに口を開く。

「一時的に必要な労力なら購入する必要はないですが、

 その作業に機密保持がどうしても必要な場合なら、どうでしょうか?」


ゼマンは抑揚なく言葉を吐き出した。

「つまり、作業が終われば殺すような場合だと?」


モルチッヒは首を激しく振った

「これはもちろん、ただの推測に過ぎません。

 正直、奴隷の価格上昇の話に興味はありますが、

 危険な匂いがプンプンします、拙い商人の勘ですが」


「いえ、商人の勘は侮れません。

 あなたのような熟練の商人であれば尚更です。

 まあ、神の杖としては大変心苦しい話題ではありましたが」

そう言ってゼマンは微かな笑みを浮かべた。


モルチッヒも微かに口角が緩んだ

「お役に立てたなら幸いです。

 私も奴隷に関して興味深いお話を聞けました」


ゼマンは質問を切り替えることにした、

「では本来の質問の・・・

 貧民街の住人で事業を起こす件に関してもお尋ねしたい」


モルチッヒは少し安堵の表情を見せて頷いた。

「ええ、もちろんです。

 私としてはこちらの方が興味がありますから」





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