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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
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N-1 騎士アルテタと王子クープラン

ナーゲン国 第一王子親衛隊副隊長アルテタ・ハイネマン 第0話です


王城の赤いドア

赤は高貴な色とされ庶民が身につけることを許されない。

王族と、その親衛隊のみが許された色。それが ”赤” 。


騎士アルテタは王子クープランの私室ドアをノックした。

「王子、騎士アルテタ。参上致しました。」

「入れ」

中から王子の声が返ってきた。


「ハッ、失礼致します」

中に入り、ドアを閉める。

直立し、声を上げる。


「ご命令でしょうか?」

アルテタは室内をあまりみないように王子を探した。

王子は窓に近い椅子にずり落ちそうな姿勢で本を読みながら答えた。

「ああ、うん。

 午後に街に出ようと思うんだ

 共をしてくれないか?」

「護衛は私が見繕って宜しいですか?」

「いや、目立ちたくないからお前だけだ」

「目立ちたく無い、というのは一体・・・?」


王子は本をぱたりと閉じて椅子をこちらに向けて真剣な顔で言った。

「下町でアサシンギルドの動きが活発だと蜘蛛達から報告が上がってる、

 自分の目で見ないとよくわからないんだ。

 あと、月光亭のシチューが美味いらしいからそれを食べたい」

アルテタはにべもなく

「駄目です、護衛が私ひとりでは王子の安全を確保出来ません」


「頼むよ、早めに確認しないとまずいんだ

 お前が断るなら王族専用通路で脱走するよ?」

王子は笑いながらそう言った。


アルテタは呆れながら上申する、

「王子に何かあれば我々親衛隊は全員斬首となります。

 それをご承知の上で仰っているのですか?

 私には母がおり、隊員には家族があります。

 トナムなど先月に子が生まれたばかりなんですよ?」


王子は困った顔で続ける

「わかってる

 わかってるんだよ

 でも王城から出ない王族がどうやって治世を敷くんだ?

 足りないものがわからない王が何を選んできたか

 お前は知ってるだろ?

 これは命令だ、危なそうな場合は相談する、な?」


ナーゲン国は気候もよく、食料事情は豊かな国であるが、

前王ハイネブルグ3世は魔物の増加を聞いてから、

戦争などしたこともない兵達を叱咤し、

軍備増強を旗として隣国の鉱山資源を求めて進軍を開始、

3年にも及ぶ戦争状態に国内が疲弊しきったところで敗戦。

ハイネブルグ3世は病で急死、

後を継いだ現王ハイネブルグ4世が戦争の求償のため、

また民に苦難を強いているのがナーゲン国の現状だ。

重い税に手足を奪われた民が縋ったのがエミル教国の祖エミル神である。

首都ナーゲンフィルにも神殿が3つあるが、これは無論国費で建てている。


ナーゲンの力は弱いと王子は考えているのだろう。

王子は齢13ながら剣術にも興味を示さず、自室で書物を読んでばかりいる。


我が主たる王子は名君の資質がある、そうアルテタは感じている。

これが王子が必要と考えることならば、命を賭してやる覚悟はある。


「わかりました。

 ただし、鎖帷子を着装の上、平民の衣服をご着用下さい」

「重いから嫌なんだけど」

「王子・・・」

「わかった。着るよ」

「しかし門番に見つかると大事ですよ、どうしますか?」

「大丈夫、抜け道がある」

「王子・・・・・・」

「えっと、たまにしか使わないし、危ないところには行ってないよ」

「それなら何故わたしに?」

「アルテタは強いし、嘘言わないでしょ、

 俺はまだ王じゃないからウソも冗談も言うけど

 きっと王になったらウソは言えないし、

 云った言葉を下げられなくなる、

 だからお前は俺の試金石なんだ。

 お前にウソを云うようであれば俺はきっと愚王になると思う。

 まあ、それはそれとして。

 今日行くのは貧民街だ、

 宜しくね」


アルテタは首を上に向け、目を閉じた。

親衛隊は一同、今日斬首かもしれない・・・


王子の年齢を追加しました。

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