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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
45/67

N-14 アルテタ 教会

工匠通りでゼフと別れたアルテタは教会に向かう


既に暗い夜道の中、ポツリポツリと残っている街灯の灯りを頼りに、

アルテタは工匠通りから王門通りに出て、エレム教会へ歩みを進めた。


朝から食事も抜いていたので、腹に何か収めたいところだったが、

財布ごとゼフに渡してしまったので、どうにもならなかった。

漂ってくる焼き串の匂いが妬ましかった。


(王子の安全よりも自分の腹の虫を心配している)

(私はなんと浅ましいのか)


自分の未熟さを噛み締めながら歩みを進めて、エレム教会に着いた。

入り口のドアのノッカーを2度叩くと、

暫く待つとドアに付いている物見窓が開き、すぐにパタリと閉じた。

それから物音が少ししてからドアが開き、

シスターレヴィーネが笑顔を浮かべてから会釈した。

アルテタも一礼した。


レヴィーネはまた笑みを浮かべ、

中に入れるように道を開けた。

「ゼマン様達もお戻りですよ、

 イグノ様がお見えになったら通すようにと言われております」


「はい」

答えながらアルテタは教会に足を踏み入れた。

視界中央にはエレム像が立っており、教会の中は外よりも一層寒く感じた。


アルテタは背を曲げながらシスターレヴィーネに顔を近づけた。

「おふたりは執務室でしょうか?

 昼に使ったあの・・・」


シスターレヴィーネは笑顔を浮かべた

「ええ、同じ部屋です」


アルテタは少々近づけすぎた顔を遠ざけながら姿勢を正し、

執務室に向かった。

後方で木の軋む音、次にドアが閉まる音がしていた。


執務室のドアの前でアルテタは立ち止まり、2回ノックした。

すぐに声が返ってきた。

「どうぞ、入ってください」


アルテタは中に入り、ドアを閉めてから室内を見た。

ゼマンは執務室の机に肘を乗せ、顔の前で手を組んでいた。

その手前には、椅子に座ったクープランが

椅子を後方に傾けながら、歓迎の挙手をしていた。


「ご無事で何よりです」

アルテタは一礼した。


(皆、斬首は免れたぞ)

アルテタは少し下を向いたままだった。


「残念ながら顔を晒す機会もなかったよ」

クープランの声でアルテタが顔を上げると、

王子は残念そうに遠くを見る目をしていた。


アルテタは王子の隣に置かれていた椅子に座り、

王子の顔を見つめた。

「いまひとつ理解出来ていない気がするのですが、

 これは成功ですか?」


王子よりも先にゼマンの顔が動いたが、何も喋らなかった。

クープランはゼマンを見て、少し頷いた。

「最上とは言えないが成功だ、

 これで蜘蛛の一人が幹部になるだろう。

 それで黒幕に近づけるなら全然成功だよ」


そう言ったクープランの表情は、アルテタからは少し不満そうに見えた。

アルテタは王子に質問した。

「それでは、これからどうしますか?」


ゼマンが王子の視線に気づいて口を開いた、

「王子には私と一緒に行って貰うところがあります。

 その後でまた、こちらに戻ってきますのでイグノ殿はここでお待ちください。

 ああ、イグノ殿がお戻りということはゼフも無事ですよね?」


アルテタは頷いた

「実に頼りになる少年だった、あれは良い斥候になる」


ゼマンは微笑を浮かべて頷き、

それから王子に目を向けた、

「では行きましょうか」


ゼマンが立ち上がったところで、アルテタも立ち上がった。

「そういえば、ゼフが貴族がいると言っておりました」


即座にクープランがアルテタの顔を覗き込みながら鋭い声を出した。

「いつだ?

 どんなやつだ?」


アルテタは少したじろぎながら記憶を探した。

「あれは、王子が地下室から連れ出された後で、

 ゼフの先導で夜の貧民街を移動していた時です。

 遠くの民家に商人風の男がいたのですが、

 ゼフがあれは貴族だと言っておりました」


ゼマンがアルテタを見つめながら早口で問いかけた

「彼なら内容まで聞こえたのではありませんか?」


アルテタはゼマンに顔を向けた

「はい、ゼフは会話の断片を教えてくれました。

 確か・・・アルカパ、7日以内、20人、半分は死体でもいい。

 という内容でした」


ゼマンは思案顔で再び椅子に座り直した。

王子も何かを考えているように見えた。

そのまま何分か、時間が流れていった。


アルテタは声を出した。

「ゼマン殿、行くところがあるのでは?」


ゼマンはすぐに顔を上げると王子に告げた

「そうでした、すぐに行きましょう」

「そうだね」

王子も頷いて立ち上がり、二人で執務室から出ていった。


アルテタは深く溜め息をつきながら、

ふたりの出ていったドアを見つめていた。


ひょっこりとシスターレヴィーネが悪戯そうな顔をしながら顔を見せ、

「お茶でも入れましょうか?」

と呟いたので、アルテタは姿勢を正した。

「恥ずかしながら朝から食事を抜いておりまして、

 出来れば食事をご用意頂けるとありがたい」


シスターレヴィーネは口に手を当てながら呟いた、

「お客様にお出しできるようなものがあるかしら・・・」


アルテタは大きく手を振りながら、

「ああ、いや、私は食には通じておりませんので

 食べれるものなら何でも大丈夫です、

 ご無理のようならお気になさらず」


それを聞いたシスターレヴィーネは顔に少し怒りを浮かべた。

「まるで味がわからないような仰り方ですわね、

 生命を頂戴し、日々の糧に感謝するのに、味もわからないとは

 何という不信心ですか!

 簡単なスープとパンがご用意できますので、覚悟してお待ちくださいませ!」

そう言って姿を消して、カツカツ音を立てながら遠ざかっていった。


アルテタは呆気に取られながら考えていた。

(何か間違えたのだろうか・・・)

誤字修正しました。

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