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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
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H-14 メディア 鍛冶場

メディアはマスターと鍛冶場に向かう


前を走るマスターを追いかけて、私も走った。

マスターの走る速度はそれほど速くなかったけど、

時々後ろの私の方を振り返りながら、先導してくれた。


村の南西の外れに一軒の小屋があって、それが鍛冶場みたい。

隣には薪小屋もあって、薪はかなり積まれてる。

小屋のすぐ西は森みたいになってた。


「ここだ」

そう言ってマスターは入り口のドアを調べた。

マスターはドアに掛けられた鍵を調べて、ガチャガチャやってたけど

暫くして私の方を向いた。

「鍵が閉まってるな、近所の家に預けてないか聞いてくるよ」


私は頷きながらこたえた

「じゃあ私は周りを確認しておくね」


マスターは軽く頷いてまた走り出しながら手を振った、

「わかった、じゃあ頼む」

私も手を振った。


私は他の入り口がないか調べながら、

鍛冶場の周りを歩いた。


窓も動かしてみたけれど、鍵が付いてて入れなかった。

隣に薪小屋があるから薪集めの必要はなさそうだけど。


私は西の森に入った。

本当に木しかない、動物の影は全然ない。

少し進むと崖になってた。

崖の少し先には結界が見えた。


下を見たら木と草地と畑ばっかりだったから、

私は歩いて鍛冶場に戻った。


鍛冶場に着くと、もう入り口のドアは開放されていて、中から音がしてた。

私が中に入るとマスターは石造りの鍛造炉に火を入れていた。

小屋の真ん中には風呂桶みたいな大きさの真っ黒で埃だらけの溶解炉があった。

この村は鉱村じゃないから、私にはすごく不似合いな代物に見えた。


「農村にしてはちゃんとした鍛冶場ね、誰が使ってたの?」

私の声に反応して、マスターが額の汗を袖で拭いながら私の方を向いた。


「ああ、この村を気に入ったっていう変わった学者がいてな。

 この辺は鉱山もないのに、でっかい炉を拵えて弟子と二人で居着いたんだ。

 材料なんかは馬車で取り寄せてた。

 お貴族様か国のお抱え学者が隠居したんじゃないかって皆で噂になってた。」


私は黒ずんだ溶解炉の縁に手を乗せた。

「へぇ、有名な人だったの?」


マスターは少し火のついた炉に吹子で風を送りながらこたえた

「こんな村に来るような人は大体訳アリだからなぁ、

 突っ込んで聞かないのがマナーみたいなもんで名前しか知らない。

 学者さんの方はデザーンって言ってたな。

 30後半くらいの細っこい人だった。

 弟子の方はジシュマドだったかな、熊みたいな大男で鍛えられた筋肉してたよ」


私はマスターの後ろまで歩いて行った

「そのふたりは?

 もういないの?」


マスターは前を向いたままだった

「鍵をゾルソンさん家に預けたとこを見ると、他の町に避難したんじゃないか?

 姿は・・・だいぶ見てないな、最後は2週間くらい前か?

 鍵を預けたなら、戻ってくるつもりはあるんだろうけどな」


私は少し考えてた。

怪しいと思えばキリがない、

あったこともないんだから尚更。


マスターと一緒に溶解炉にも火を入れた。

でも入れるはずの鉄鋼土がなかったから代わりに薪を突っ込んで炭炉になってしまった。


ないものはないし、とりあえず燃えればいいよね?


マスターに火の番はどうするか相談したら、

鍵を預かってたゾルソンさんが何人か連れて、後から来てくれるらしい。


鍛冶場のドアを開放したまま、

私はマスターは椅子に座って火の番をしながら話をした。

村に何人くらい残ってるか、とか

マスターが昔、王都の有名店で修行してた、とか

奥さんの鹿シチューがすごく美味しいけど、レシピを教えてくれなかった、とか

そんな話をしていたらお爺さんが3人こっちに手を振りながら歩いてきた。

「おーい、連れてきたぞー」

外はもう日暮れ間近だった。

マスターは目を細めながら、座ったまま彼らに向かって右手をあげた。

それが終わると、立ち上がって私を見た。

「じゃあ、戻るか」

「うん」

私も立ち上がって彼らに手を振った。




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