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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
38/67

H-12 メディア 酒場で抱くもの

ヨークに鉄拳制裁したメディアは酒場のレチカに癒しを求める


ようやく酒場に戻って、私はレチカちゃんを目で探した。

レチカちゃんはカウンターに近い場所のテーブルを拭いていた。


声を掛けようとしたけど、声は出なかった。

そのままレチカちゃんのところまで歩いて行って、

彼女を振り向かせて抱きついた。


「キャアッ!」

レチカちゃんが悲鳴を上げてるけど私は気にしない、

私の方が背が高いけど、顔は首筋に埋めた。

良い匂いがする。


「メディア・・・さん・・・?」

レチカちゃんの声は戸惑いがあったけど私は気にしない、

少し力を入れて強く抱きしめた。

細いけど柔らかい身体と、少し体温が低い肌が私を包んだ。


「何かあったんですか?」

そう言ってレチカちゃんは私の頭を撫でてくれた。

私は彼女に首筋に顔を埋めたまま、首を横に振った。


「ちょっとだけですよ?」

そう言ってレチカちゃんは私を抱きしめた。

なんだかとても安心する。

ずっとこのままがいい。


2分か3分か、そのままでいた。


私は顔を上げてレチカちゃんにお礼を言った。

「ありがとう、ちょっとスッキリした」


レチカちゃんは慌てて髪を梳かしながらこたえた、

「いえ、私もなんか、思い出しちゃいました」


そうだ、レチカちゃんは家族が行方不明だった。

安直で余計なことをしたと思って、かなり後悔した。


「あっ、騎士さんからお話聞いてきましたよ」

私はレチカちゃんの声でハッとした。

「そうだった、探してくれてありがとう。

 それで、騎士さんはなんて?」


「俺にも聞かせろ」

酒場の入り口に"Bランク"が立ってた。


あいつはこっちに歩いてきて、私の前に来た。

それで「あー」とか「おー」とか「んん」とか言いながら考えてるみたいだった。

また私を馬鹿にするつもりかと思って心の準備をしておいたら、

あいつは私の肩を掴んで

「オメェは仲間だ、人生色々あるけどよ。

 お前もハンター、俺もハンター、仲間ってやつだ、

 正直、俺はオメェが苦手だが、それでも共に戦う以上仲間だ、

 いいか?」


何を言ってるのか良くわからなかったのに、

妙に説得力があって、私はいつの間にか

「わかった」

ってこたえてた。


そしたら"Bランク"はなんか安心した顔に変わってた。

もしかしたら馬鹿で変態なだけで悪い奴ではないのかもしれないって、

思ってしまった。

こういうのは一度呑まれるとダメだ、自分の単純さがうらめしい。


「おし、じゃあネエちゃん。話してくれ」

"Bランク"はドカッと椅子に腰掛けてレチカちゃんの方を見てた。


「はい」

レチカちゃんは給仕服のポケットからメモを取り出して、読み上げた。

「魔獣が出るのは夜だけみたいです、西にある墓地で見たそうです。

 狼か犬の魔獣で数は30-40匹いたと言ってました」


私は質問した

「レチカちゃん」

レチカちゃんは私の方を向いた

「はい」

私は続けて言った

「野犬じゃなくて魔獣としたのはなんで?大きさ?」

レチカちゃんは少し困った顔をしながら

「普通の犬や狼より少し大きい程度だったそうです。でも・・・

 身体から黒い"もやのような何か"が出ていたそうです」


私は考えた、状況とその魔獣のことを。

"Bランク"を見るとあいつもなんか考えてる感じだったけど、

レチカちゃんに向かって質問した

「あー、悪いが質問だ、

 そいつ、斬っても治ったりするんじゃねぇか?」

「騎士さんは、戦闘はしていないから断言は出来ないけど、

 おそらく治るだろうって言ってました」


"Bランク"はまた考え込んで、ぼそっと言った。

「なるほど、メンドクセェな」


私は"Bランクに聞いてみた、

「面倒くさいって何が?」

「ああ、それがな、斬っても斬っても傷が治りやがるし、

 足を切断してもまた生えてきやがったのがいてな。

 そいつもなんかモヤが出てた」

「どうやって倒したの?」

「燃やした」

”Bランクはハンドサインで"爆発"を作ってみせた。


「燃やすのは首?」

「そうだ」

「油と火が要りそう、出来れば鍛冶場の炉も欲しいわね」

「だな、マスターどうよ?

 ここに鍛冶場あんのか?」

マスターは頷いて、

「北西の墓地からは少し離れてるが、それでも構わないか?」

「無いより全然いいぜ?」

「わかった、案内しよう。鍛冶場は村の南西に一軒ある」

マスターはエプロンを外してカウンターから外に出てきた。


「鍛冶場はグリグリ、お前見てこい。

 火も入れておけ」

私は"Bランク"を見た。


"Bランク"は少し後ろめたそうに

「んだよ、俺は木材やら薪集めだ、あいつらとな」

そう言って親指で後ろのハンター達を指した。

私は頷いて、外に出た。


まだ陽は高いけど、もう秋も深い、

昼間の時間は長くない。


マスターは私を見て頷いてから走り出した。

私もマスターを追いかけた。


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