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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
33/67

N-10 麻袋の王子


クープランは麻袋に詰められたまま、冷静さを取り戻す。

痛みと吐き気も収まってきた。


室内にドアはひとつ、監視はひとり、さっき気絶させられた背の低い黒髪の男だ。

通路で続きになっている隣の部屋からは話し声が聞こえる。賭けカードをしているようだ。

人数までは残念ながらわからない。

声の響き方でこの部屋が地下なことはわかる。


黙って経過を待つしかないだろう。


やがてドアが開いて麦色の髪をした商人風の若い男が入ってきた。

身なりも清潔、彼は地下の臭気に不愉快そうに顔に皺を寄せた。


「どこかのガキを攫ったらしいな、どいつだ?」


黒髪の男が進み出て、ボソボソと言い放つ。

「俺が攫った、ルージアも一緒にやった」


商人風の男は鼻で笑って黒髪の男に向かった

「病気持ちの娼婦くずれとか?

 骨と皮だけの女とよく付き合えるな、気色悪い。

 もっといい女流してやろうか?」


黒髪の男はボソボソとこたえた

「俺は、ルージアがいいんだ、放っておいてくれ」


商人風の男は理解に苦しむ様子で額を掻いた後、

「まあ、いいさ。

 で、そのガキはこれか?」

麻袋を足で示した。


黒髪の男は商人風の男の後頭部に向かってこたえた

「そうだ、ルージアが金くれるようにガキ走らせた、

 ルージアは入り口でそいつを待つ、言ってた」


商人風の男は黒髪の男に向き直った

「いくらだ?」


黒髪の男は首を振った、

「俺は、知らない、ルージア決めた」


商人風の男は舌打ちして、ドアから出ていった。



暫くして、商人風の男は機嫌の良さそうな顔でドアから戻ってきて、

「あの骨女なかなか知恵が回りやがるじゃねぇか、

 なかなか悪くねぇ」

そう言って黒髪の男の太腿を蹴った。


黒髪の男はまたボソボソと呟く、

「ルージア頭いい、俺はルージアの言うことだけきく」

そう言って歪んだ笑みを浮かべた。


商人風の男は麻袋に近づいて蹴り飛ばした、

「で、ちょっとこいつのツラ拝ませろ、袋から出せ!」


黒髪の男はのっそりと近づいて、商人風の男の肩を掴んだ、

「ルージア言った、顔見られたら殺す、だから開けない」


商人風の男は頬を掻きながら

「チッ、まあいい。骨女には半分寄越せと言ってある。

 せこい真似すんなよ?

 これで目処がたつ」


黒髪の男が頷いたのを確認して、

商人風の男はドアからまた出ていった。


隣の部屋への人の出入りはそれなりにある、

聞こえてくるのは、酒とカードゲームと煙草のこと、

娼館のこと、奴隷の値段が上がったこと、

隣の国に行った奴が景気良さそうだったこと。

ギルドの景気が上がったこと。


クープランは麻袋になったまま、

時間が経つのを待った。

ゼマンはまだ来ない。




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