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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
31/67

N-9 クープラン 誘拐


上品な笑顔を浮かべながら、レヴィーネは道中の裏道を歩く間、

ずっと話を続けていた。

ゼマンのこと、神のこと、洗濯のこと、これから買い物に行くこと、

どの店が安いか、誰と誰がいい仲になった、などなど。

クープランはそれを笑顔で受けながら進んだ。


貧民街の少し手前でレヴィーネと別れた、

クープランは彼女に手を振り、前に歩き出した。

貧民街の入り口に少年が一人いた。


そのまま通り過ぎようと真っ直ぐに歩く、

横からは独り言が聞こえる。

「財布を拾ってついてたぜ、結構入ってやがる」


クープランは真っ直ぐに向いたまま貧民街へと足を進めた。

入り口からすぐに男が見えた。

煙草を咥えている、が吸っていない。


クープランは速度を落として歩いた。


角の男はゴソゴソと着衣を漁って

男は火擦りで煙草に火を点けた。


クープランは歩く速度を戻して右路地に入った。


そのまま歩いていくと正面にドアがある行き止まりになっていた。

人影はない。


クープランはそのまま歩いて行き、

ドアをノックし、後ろに手を組んで一歩下がって待った。


・・・・


そのまま1分


誰も現れない


もう1分


・・・・・・


ドア奥から物音が聞こえたが、

クープランは動かずに待った。


古いドアは軋む音を立てながらゆっくりと開いた。

ドアを開けたのは、黒髪で筋肉質な背の低い男、

その後ろには痩せ細った若い女がいた。

二人の目には失望と絶望しか見えない。


クープランは軽く一礼した。

男は頷いてからゆっくりと近づくと、

クープランの腹を突き上げるように一撃した。


クープランの意識はここで途絶えた。



・・・・・・


クープランが目覚めた時、

猛烈な内臓の痛みと麻の匂いを感じた。

思わず声をあげそうになる痛みと

猛烈な吐き気が迫る中、クープランは必死で堪えた。


顔を晒さないように麻袋に詰められて、

拘置されていることを理解したからだ。

声をあげれば覚醒したことが露見してしまう。


監視役も手配済み、アルテタもどこかで見てるはず。


痛みと吐き気に抗いながら、クープランは冷静を意識した。

そして麻袋を選んだ者に拍手を送りたくなった。

外からは見えず、中からは外が見えるからだ。


クープランの脳は演算を始めた。

気絶していた時間は不明、

拉致されて拘禁後、すぐに身代金要求に使い走りが出る、

この使いっ走りも蜘蛛だ、商人の家に走る。

商人の家には他所の町から来た行商人が来訪、宿泊している、

ゼマンが手配済みなので、その商人はエレム教会に来る、

商談のつもりで。

ゼマンは商人をすぐに追い返す、後で伺うと言って。

それからゼマンが出発、貧民街で案内されてここに来る。


それがおよそ

ー 90~120分後 ー


気絶していた時間はわからない、

このままやり過ごせればそれでもいい、

だが、幹部がいるなら是非顔を見ておきたい、

顔を見せてみたい。


麻袋を剥がされて何者かわかるようなら城内に蠍がいる。

そうなるとその蠍は高位貴族家子女しかなれない王族専属女中か、

大臣か、近衛か、王位に近い血縁者になる。

これはもう王の首元、手遅れになりかねない。


盤上は劣勢、でもまだ動ける。

こんな盤は、たかが盤上のひとつのマスだ。

もっと大きな父上の盤上のひとつマスに過ぎない。


王は、もっと絶望的に劣勢な盤上で耐えている。






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