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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
23/67

H-7 メディア 騒乱の夜、静かに


さっきまで騒いでいた荒くれ達も、

殆どが机に頰づりしているか、床に沈んでる。

もうほんと静かなものよ。

あいつに吹き飛ばされてた騎士は、腕を押さえて大声で呻きながら

どこかへ歩いて行った。


酒場には平穏が戻ってる、

壁はちょっと飛ばされてなくなったけどね。

マスターは壁のことは無かったことのように

給仕の子と片付けをしていた、

この国の酒場ってこんな荒れてるの?


私はカウンターまで歩いていって、カウンター席に座って

マスターに話しかけた。

「ねえ、壁に穴開けられたのに何も言わないの?」

突然話しかけられたマスターはこっちを向いてから

「別にいいさ、

 もう村の人間はほとんど残ってないし、

 俺たちもいずれ出ていくことになる、

 この村は終わりさ、ここに愛着はあるが、それだけだ。

 さっきの話聞くと出れるかも怪しそうだがな、まぁあんたらに期待するよ」

「怒ってないの?」

「話は大体わかっちまったし、

 ハンターが怒るのも無理ないさ」

「でも、マスターだって出れないでしょ?」

私は迂闊な質問だったかもしれないと思った。

「実はな、封鎖することはあの騎士から聞いて知ってたんだ。

 あんたらごと封鎖するとは思ってなかったが、

 あんたたちには本当に申し訳ないと思ってる。」

そう言ってマスターは頭を掻いた。


「この村に何がいるの?」

私が聞いたらマスターは一瞬止まったような気がした、

「わからない、野犬がやたら増えたと思ったら、村人が何人か行方不明になった

 村の皆で捜索したら、この上の林で争った血痕があったが死体が見つからなかった、

 咥えて引きづられたかもしれないってんで、

 その後も山を探したんだが見つから無かった。

 そんなことが続いたんだ。

 気味悪がって村を去った奴もいる。

 だから何人やられたのか、正確にはわかんねぇ。

 そんで領主様に陳述書を直参したわけだ。」


「それで騎士が来たと?」

「ああ、騎士の話だと他の村も似たような状況になってるらしくてな、

 精鋭部隊で退治して回ってるが、辺鄙なとこは後回しにされてるんだとよ」



カウンターの外で掃き掃除をしていた給仕が声を上げた

「マスター、これ朝まで開ける?」

そう言って至る所で寝ている男たちを呆れ顔でみた。


「ああ、俺たちに出来るのはこれくらいだろうしな」

マスターがそう答えると給仕の子は頷いて「そうね」といって片付けに戻った。


「俺たちはよ、志願して残ったんだ。

 俺は妻が、あの子は家族全員消えた。

 ここで逃げたら見捨てたみたいじゃねぇか。

 それに、

 まだ生きてるかも知れねぇだろ?」

そう言ってマスターは笑った。


私は思わず言葉に詰まったけど、そのまま飲み込んだ。

言ってはいけない言葉がある。

その人が、マスターの大事な人だとわかるから





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