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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
赤い日
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赤い日 1a 竜の宣告 R木人リュクテ


目を戻した先、巨体の両翼が風を吹き起こす。

吹き飛ばされそうになるが、何とか踏ん張って耐える。

強風で前は見えないが、竜が着地しようとしている。


巨体の着地で地震が起きた。

地面が割れる。

僕は反動で数秒宙に浮かんでから着地した。


「そこな小さきもの、ティティスの眷属よ」

地の底から唸るかのような、低い低い声が聞こえる。

「問う、貴様も仲間か?」

僕は前を向いた。

「仲間とは何のことでしょう?」

竜は不愉快そうに歯をガチガチと当てると、そこから火花が咲く。

「我に虚言は通じぬ、言葉に偽りを持つは弱きものなり。

 強きものに偽りは不要。問う、貴様は強きものか?」


今にも食いちぎらんとする巨体の鋭い眼光に凄まれ、

僕は答えが見つからない、

「強いかはわかりませんし、弱いかもわかりません。

あなたから見て、僕は強きものでしょうか?」

僕の言を受けて、竜は目を大きく開き、首を持ち上げた。


一瞬の沈黙の後、竜は口を開く

「戦わずして答えること能わず、戦いの後に焼かれたその身は答えを聞くこと、また能わず。

 問いに問いを返す貴様は無能か?

 我が問いを蔑ろにしたこと、その身を焼いて償うがよかろう。」

僕の命運はどうやらここまでのようだ。

僕はせめてもの願いを投げかけてみる、

「痛いのは嫌なので、痛くない方法でお願い出来ますか?」


竜は私を見下ろし、鋭い目で睨みながら顔を近づけてくる。

「魂の消滅を恐れぬか、ティティスの眷属。

 厄心なくば償いにもならぬ、厄介な奴だ。

 よい、我とティティスの約定と誓約を結び直し、

 それを償いとせよ。」


僕は竜に問いかける、

「約定とは何でしょう?」


竜は目を細めてから大きく開き、歯をガチガチと当てた。

着火音がして、また火花が散る。

「貴様が知る必要はない、結びの式はティティスに聞け。

 興が冷めた。

 贖いも満たしたゆえ、我はゆく。

 ゆめゆめ忘れるな。

 宣告する、次の実りの時期に間に合わねば、

 貴様の魂では足りぬ、ティティスを喰らう」


ひとつ鼻息を鳴らして竜は大きな翼をはためかせ、浮かび上がった。

竜は暫く私を見つめていたが、やがて明るい方向へと飛び去った。






少しだけ改変

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