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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
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E-3 湖畔のフーヴェル 回想2


カスタジェの後頭部がこちらを向いている。


「ワインは夜だけって言ってませんでした?」

「言っとらん」

「目を見て話してください」

「むぅ・・・」

カスタジェ様の顔が旋回してこちらを向く

私はじっと見つめた

やがて

「カーっ、その目をやめんか!」

私は言う

「言葉を偽るなんて祈りの守人失格ですよ」

「偽ってなどおらん」

「だってお酒は・・・」

「儂は”控える”と言っただけじゃ」

「控えるはやめるですよ?」

「控えめに飲むのはアリじゃ」

私はヒゲを引っ張った

「無しですよ、屁理屈!」

「むほっほ、あ、ああっ、やめんかっ」

私は言う

「ずるいですよ」

「これは知恵じゃよ」

私はカスタジェ様に願う

「やめるに変えてください」

カスタジェ様は驚いた顔をした後、

いつになく真剣な顔でこう言った

「断る!」


私はもう諦めて訊く

「もういいです、本当に少しなんですよね?」

「おお、もちろんじゃ、ちょびーっとじゃよ」

そういうカスタジェ様はとても楽しそうだったけど

私は裏切られた気がしてたから

ジーーーっとカスタジェ様を見つめた

「楽しみも少ない老人をいじめるものではない、

 ほれ、折角昔話をしてやったんだから

 大樹について感想でも考察でも言うてみよ」


「カスタジェ様は大きいからよく見えるかもしれないけど、

 私は小さいからよく見えません。」

私はそうカスタジェ様に言った。


カスタジェ様はヒゲを触りながら

「ふむ、お前は高い方が大きく見える、そう言うんじゃな?」

そう言って私を見た。

私は答えた

「はい」

それを聞いたカスタジェ様は嬉しそうにヒゲを撫でた。

ヒゲを何度も撫でた後で口を開く

「手順は?」

「実験、終わったら分析と考察」

「分析出来るんかの、コレ?

 まあ良い、では実験からじゃの」


「よっせぇの、んっ」

そう言ってカスタジェ様は私を抱え上げた


カスタジェ様の顔と同じ高さで大樹を見た私は言った

「先生、さっきより大きいです」

「ぬ・・・まことか?」

「はい、鳥がたくさんいます」

「ほぉ、どんなじゃ?」

「白い鳥?です」

「ほお、さっき話した白き翼かもしれんの」

「先生は見えないのですか?」


先生を見ると丸く大きな目がこちらを見ていた

「おぬし、儂いくつに見える?」


私は首を傾げながら答えた

「ひとつですが?」



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