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エルブの森  作者: 秋乃 志摩
予兆
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E-3 湖畔のフーヴェル 回想1


フォルランに護られたエルブの森は獣達の楽園だ。

湖には魚が泳ぎ、鳥が空を飛び、鹿や兎や熊。

夜にはリスやたぬきが動き回り、梟と狼の鳴き声が聞こえる。


フーヴェルは湖畔の小岩に座りながら

自分がまだ木苺の木よりも小さかった頃を思い出していた。

カスタジェ様がこの小岩の上で、

優しいしゃがれ声で教えてくれた古い話を。


「森の外にはヒューマンという種がいてな、

 その種はやたら弱いのに、欲深くて、言葉に力を持たん。

 この森にヒューマンが居ないのは、

 森神フォルランの加護と恩恵を捨て、

 より豊かな土地と暮らしを欲したからじゃ。

 優しい森神フォルランはこの厚かましいヒューマンを

 二度とこの森に踏み入れないことを条件に

 外に送り出したんじゃ。

 母たる森神に不敬だと白き翼は怒り狂ったし、

 エルフは友人だったヒューマンの身を案じ、

 巨人と多毛族は沈黙を貫いた。

 ヒューマンの去った後、

 優しい森神は涙を流したそうで、

 右の涙は青暗い淡水湖に

 左の涙は薄緑の塩湖になったと言われておる。

 それでも森神フォルランの涙は止まらず

 皆が心配してフォルラン元に集まった。

 フォルランの前で心配そうに見つめる森の住人達に

 森神はこう言ったそうじゃ。


 "心配しないで、少し眠いだけ"


 フォルランはまばゆい光を発し、

 光が消えると大樹となった」


そしてカスタジェは捩れ曲がった杖で湖の反対、

雲を貫くような大樹を示した。


「まあ、儂も聞いた話で本当かは知らんがの」

そう言ってカスタジェは舌を出してウインクした。


そのカスタジェ様の舌の色を見て私は言った

「カスタジェ様、昼間からまたワイン飲みましたね?」


カスタジェは目を大きく開いたまま、首だけを回して顔を背けた



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