第007話 「護衛任務の真実」
ギルドから紹介された仕事を受けた彼、大輔、朱華音の3人。今回の依頼は、ある商人の護衛だった。依頼を受けた3人が指定された待ち合わせ場所に到着すると、スーツ姿の中年男性が現れた。彼は深々と頭を下げると、柔らかな口調で自己紹介を始めた。
「初めまして、私はグレゴリー・浅間と申します。商売をしております。今回は横浜までの輸送をお願いしたく、ギルドに依頼させていただきました。」
グレゴリーは落ち着いた笑顔で3人に挨拶し、丁寧に依頼内容を説明した。輸送品は精密機械だと商人が説明すると、大輔が「楽な仕事そうだな」と軽いノリで話し、雰囲気を和ませる。黒いバンが準備され、グレゴリーの指示で3人は早速乗り込んだ。目的地は横浜の港。
車内では、大輔が軽口をたたきながらも、商人に話しかけた。
「グレゴリーさん、こういう輸送の仕事ってしょっちゅうやってるんですか?」
グレゴリーは穏やかな笑みを浮かべて答えた。「ええ、そうですね。ただ、今回のように護衛をつけるのは珍しいです。横浜までの道中は比較的安全だと聞いていますが、念のためです。」
その言葉に彼が興味を持ち、「僕たちも今、ギルドの依頼を受けながら鍛えているんです。将来はアリーナを目指していて。」と話し出す。
グレゴリーは少し驚いた様子で、「アリーナですか。それは素晴らしい目標ですね。3人で挑戦するのですか?」と聞いた。
朱華音が静かに頷き、「そうです。私たちはそれぞれスキルや特技が違いますが、だからこそ補い合える。アリーナではそれが重要なんです。」と説明する。
「確かに、チームワークが鍵になりますね。」グレゴリーは感心した様子で、「アリーナを目指すには、強力な武器や防具も必要になるでしょう。何かお力になれることがあれば、遠慮なく言ってください。」と親切に申し出た。
その言葉に大輔が笑いながら、「いやいや、まずは無事に横浜に到着することが先決だろう。」と言い、車内の雰囲気を和ませた。
横浜に到着すると、車は港の埠頭へと進んでいった。倉庫街に入ると、周囲には古びた倉庫が立ち並び、人気のない静けさが漂っていた。しかし、奥深くに進んだその瞬間、突如として黒いセダン3台がバンを囲み、車は停車を余儀なくされる。
セダンから降りてきたのは、銃を構えた黒いスーツ姿の男たち。総勢10人以上。商人の顔が青ざめた。「これは……レオーニ・ファミリーだ。こんなところで会うとは……!」
「レオーニ・ファミリー?」と彼が尋ねると、グレゴリーは小声で答えた。「アメリカで暗躍するギャング組織です。彼らの親分、ポール・レオーニは非常に危険な男です。」
大輔は「なるほどな。とんでもない連中に目をつけられてるじゃねぇか」と肩をすくめた。
男たちが銃を構えたまま車を取り囲む中、グレゴリーは「お願いします!助けてください!」と必死に叫ぶ。
大輔は「俺に任せろ!」と叫び、先頭に飛び出す。彼が実践で初めて使用するスキル「鉄壁」は、銃弾を完全に跳ね返し、敵の攻撃を無効化した。その隙に、彼と朱華音も動き出す。
朱華音は抜群の速度と正確さで敵に近づき、鋭い蹴りを連続で叩き込む。その動きは目にも止まらないほどで、スーツ姿の男たちが次々と倒れていく。彼も剣を手に取り、力強い一撃で敵を圧倒していった。
しかし、戦闘は終わらない。新たに黒いセダン2台が到着し、さらに5人の敵が加勢してきた。彼は「キリがない!」と叫ぶが、大輔は「これくらい、何とかなるさ!」と笑みを浮かべた。しかし、朱華音は「ここで時間をかけるわけにはいかない」と奥の手を決意する。
彼女が召喚したのは「百恵」。光とともに現れた百恵は圧倒的な力を持ち、戦局を一気に変えた。敵は次々と倒され、ついに全員を無力化することに成功する。
戦闘後、大輔が興味本位でバンの後部を開けると、そこには精密機械どころか大量のマシンガンや武器が積まれていた。驚きのあまり声を失う3人に対し、グレゴリーは恐縮しながら真実を語り始める。
「実は……私は武器商人なんです。本来、この依頼はBランク以上の難易度なのですが、予算の関係でDランクの仕事としてギルドにお願いしてしまいました。本当に申し訳ありません!」
ギルドにこのことを報告されれば追放されることを恐れたグレゴリーは、3人に取引を持ちかけた。
「今後、アリーナを目指すなら武器や防具が必要になるでしょう。これらを特別価格で供給しますので、今回の件は内密にしていただけないでしょうか?」
3人は協議の末、この提案を受け入れることにした。そして、無事に任務を完了し、ギルドへ戻って初仕事の報酬を手にする。
その夜、いつもの大将の居酒屋で打ち上げをする3人。大輔が武器商人の提案を冗談交じりに話しつつ、彼と朱華音は今後の計画について語り合った。
「武器や防具が必要だってことは今回の件でよく分かったな。」
「そうね。でも、まだまだ実力を上げる必要があるわ。」
3人は改めてトレーニングを積み、ギルドの依頼を受けながら、アリーナへの道を目指す決意を固めた。その目には希望の光が宿っていた。