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19. 世界の鍵 一

「ううん、違うの。あのね、これは星の卵が入っている宝箱を開ける鍵になるんだよ。ほら見て。ここにそう書いてある」

 みいなはぼろぼろの指示書を指差しました。


「ふむふむ。なるほど。これが鍵になるのか。でもちょっと待つんだぞ。続きが書いてあるぞ」

「変なの。さっきそんなの書いてなかったよねー」

 みいな、にいな、平助は顔を見合わせました。


「でも書いてあるぞ。なになに? 


『光の子らよ 星の民よ

 世界の(もと)は作られた

 望む世界を描き出せ

 (こころざし)を高く持ち

 世界の(もと)を鍵にすべし


 *味付けはご自由に』


 と書いてあるぞ」


「どういうこと? 完成じゃないの?」

 にいなは首を傾げました。

「えーどういうことだろう。でも多分、私たちが今作ったのは『世界の元』ってやつなんだよね、きっと。で、これをどうにかすると、鍵になるっていうこと?」

 にいなとみいなはふっくんと一緒に紙を覗き込みます。


「ね、志って何?」

「志っていうのは、『こうしたい』って心に決めた目標のことなんだぞ」

 ふっくんは胸を張って答えました。

「さすがふっくん、物知りだね」

 にいなは、もしふっくんがずっとそばにいてくれたら、国語のテストはいつも満点が取れるかもしれないと思いました。


「『望む世界』ってどういうことなんだろう? こんな世界になったらいいなっていう気持ちを込めればいいのかな?」

 それは楽しそうだと、一同はワクワクしながらビーカーを見つめました。


「最後の但し書きも注目だぞ。『味付けはご自由に』と書いてあるぞ」

 ふっくんは文章の最後を羽の先でとんとんと叩きました。


 味付け? とみんなはさらに首をひねりました。


 すると、ポンと言う音がして、今まで木の机の上の右側にあった透明な液体が入ったビーカーがすべて消えてなくなりました。

 代わりに机の上に置かれたのは、調味料の数々でした。

 砂糖、塩、唐辛子、食用油、ごま、醤油、ケチャップ、マヨネーズ。

 チョコレート、メープルシロップ、はちみつ、ココアパウダー。

 パクチーやコリアンダー、キムチなんていう変わり種もあります。

 色とりどりの小さなつぼに入った調味料には、きちんとラベルが貼ってあるので、中身が分かるようになっています。


「わー、好きに味付けしていいんだね。楽しそう! じゃあ私、砂糖を入れよう」

 にいなは砂糖が入っていた茶色のつぼをつかむと、中身をすべて世界のビーカーの中に入れました。


「ちょっと! そんなにいきなりいっぱい入れたら、世界が甘くなっちゃうでしょう!」

 みいなはにいなを叱りました。

「でもみいな、甘い世界のほうが美味しくない? っていうか、甘いものがない世界なんて、嫌じゃない?」

 にいなは調味料と一緒に現れた木のへらを手に持つと、世界をぐるぐるとかき混ぜました。

 初めは砂糖の粒がざらりと残っていましたが、かき混ぜているうちに液体に馴染んできました。

 さらっとしていた液体は、砂糖のおかげでとろっとした感じになりました。

 生クリームみたいだなとにいなは思いました。


「それはそうだけど……じゃあ、私は塩を入れる」

 みいなは塩のツボを持つと、中に入っていた(さじ)で、一、二、三杯、塩を足しました。

「みいなこそ何やってんの! そんなにお塩を入れたら、世界がしょっぱくなっちゃうでしょ」

 もっと塩を加えようとしたみいなをさえぎるように、にいなはビーカーを覆いました。

「でもにいな、塩がなかったら、ポテトチップスがしょっぱくなくなっちゃうよ」

「え?」


「それに塩がなかったら、フライドポテトだって、ただのお芋を揚げたやつになっちゃうよ。塩が振ってないフライドポテト、食べたい?」

「それは……ちょっと嫌かも」

「それに、塩がなかったら海だってなくなっちゃうんだよ。お魚だって食べられなくなっちゃうよ」

「お魚はそんなに好きじゃないから、どうでもいい」

「でもにいな、タコだっていなくなっちゃうよ。タコがいなかったら、タコ焼きも食べれなくなっちゃうよ」

「たこ焼き……たこ焼きは食べたい。うーん、仕方ないなぁ。じゃあもうちょっとだけだからね」

 にいなはしぶしぶビーカーから腕を外しました。

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