18. 世界を作る 十一
「大変! 早く完成させなきゃ」
ゼラチンだって、オレンジジュースに加えたら、早くかき混ぜないと均一に固まってくれません。きっとこの世界を作るビーカーも同じなのでしょう。
「でもそんなこと言ったって、光の液体がまだ集まってないし」
そう言っている間にも、世界を作るビーカーからは、炭酸水のような無数の小さい泡が一斉に湧き出し始めました。
かたや、光の液体が入っていたビーカーには、相変わらず底の方にうっすらと液体が溜まっているだけです。
「光の玉にお願いしよう。光の玉さん、お願い、ビーカーの中に入って」
みいなは光の玉を手で捕まえようとします。ですが、光の玉は蛍のようにふわふわと手をすり抜けていってしまいます。
「ええい! 光よ、いでよ!」
にいなは大きな声を出して、光のビーカーに手をかざします。ですが、光の玉もビーカーも、うんともすとも言いません。
にいなは気恥ずかしげに手をこっそりと引っ込めました。
遊んでいるような、からかっているような光の玉の動きに、みいなはついムッとして、ママのような口調で言いました。
「いい加減にしなさい。あなたたち、そんなことしてると、ここにあるビーカー全部捨てちゃうんだからね!」
これは、ママがよくお片付けをしないみいなとにいなに言うセリフです。『いい加減にしなさい。あなたたち、お片付けしなかったら、ゲームもぬいぐるみも全部捨てちゃうんだからね!」と。
みいなの声にびっくりしたのか、光の玉は一斉に光のビーカーの中へ入っていきました。
みるみるうちにビーカーが満たされて、満杯になります。ですが、光の玉はまだビーカーの中へ入ろうとします。
「もういいよ、ちょっと、やめて、やめて」
みいなは慌てて光のビーカーを胸に抱えます。
「すごいじゃん、みいな! こんなにいっぱい集まった。早く入れよう」
こぼさないように二人でしっかりビーカーを持って、世界のビーカーの中に注ぎます。
「あとどれくらい?」
「あともう少しでございやす。オーライ、オーライ、ストップ! いい塩梅ですぜえ」
二人は慎重に液体を注いでいき、目盛りはぴったり990mlになりました。
「あと必要なものってなんだっけ?」
「ここには『1%のきらきらしたもの』って書いてあるですぜえ。あっし、ちょっと読めるようになって来たですぜえ」
平助は指示書を見ながら嬉しそうに鳴きます。
「きらきらしたものかー。きらきらしたものは部屋の中にたくさんあるけど、みんな大きいね」
部屋の中には、大きなエメラルドのついた王冠や、ダイヤモンドが散りばめられている剣や、黄金のゴブレットや、白銀の鏡があります。ですが、どれもこれもサイズが大きくて、世界のビーカーに入れたらすぐに溢れてしまいそうです。
小さいものはないかと部屋中を探しましたが、見つかりません。三人は途方に暮れてしまいました。
「あのお……二人さん……」
平助が気まずそうに二人の前に止まりました。
「どうしたの?」
「あの……あっしが、にいなさんから取っちまったきらきら石なんですが、一個、カラスの女王様のところからくすねてきたんです。取っちゃって、本当にすいやせんでした」
平助は羽の間からにいなのきらきら石を取り出しました。




