18. 世界を作る 十
「みいな、あった! 光、あったよ。これ見て」
にいなはみいなにビーカーを見せます。
「それだ! 早く入れよう。でもちょっと待って。えっと60%の光だと600mlだよね。合ってる? やっぱり計算したほうが――」
「みいな、早く!」
世界を作るビーカーの底では、煮詰まった闇がさらに大きな泡を立てています。
このままではいけないと、二人は急いで世界を作るビーカーに光の液体を注ぎました。
じゅわじゅわと音を立てて、光の液体は世界のビーカーの中に溶けていきます。真っ黒から少し白っぽくなった灰色の蒸気が、にいなの顔に当たりました。ゴーグルが曇ります。ゴーグルとマスクと手袋をしていてよかったとにいなは思いました。光を注いだ後、しばらく三人はじっとビーカーを見つめました。
光と闇が混じり合ってゆらゆらと揺れてはいますが、さっきまでのような噴火しそうな気配はありません。
「あー、びっくりした」
二人はへなへなとしゃがみ込んでしまいました。平助もその隣で羽を休めています。
「でも、ちょっと足りないよね。これからどうしよう?」
にいなが持っていた500mlビーカーに入っていた光の液体は、ちょうど500mlです。60%の光を作るには、あと100ml足りません。
「でも、にいなのビーカーに入ってたこの光は、どこから来たんだろうね?」
「わかんない。私ずっとお腹の中に入れてただけだし」
「ええ。でもわかんなかったら、これ以上集めようがなくない?」
「うーん、そうなんだけど」
三人は光が入っていたにいなのビーカーをじっと見つめました。
すると、光の玉が一つふわふわとやって来て、ビーカーの中に入りました。中に入った光の玉は、ふっと消えてしまいました。ビーカーの底には少しだけ液体がたまっています。
「これ、光の玉が液体になったやつなんだね。じゃあ、こうやって待っていれば、いつかたまるのかな?」
三人はしばらく待ってみましたが、光の玉はなかなかビーカーの中に入ってくれません。
じっとビーカーを見ていることに飽きた三人は、他のビーカーや試験管に入っている液体を見始めました。
「ね、これなんか結構光の色に近くない? これ入れちゃおうよ」
みいなは薄い青がきらめく試験管を手にとって言います。
「それは海のきらめきだよ。光とは違うからダメ」
にいなはきっぱりと言います。
「なんで海のきらめきって決めつけるの? ラベルも貼ってないし、わかんないじゃん」
ちょっとムッとしたみいなは言い返しました。
「見ればわかるでしょ? 青い色がきらきらしてる。これ、夏に海に行った時と同じ色だよ」
みいなはじっと青い液体を見つめました。確かに海の青色と同じ色です。
試験管を振ってみると、波のように白く泡立ちました。
みいなは試験管を戻して、隣にある試験管を取り出しました。
「じゃあ、これは?」
みいなは緑色の液体を持って聞きました。
「それは葉っぱのきらめきだよ」
「じゃあ、これ」
にいなは黄金色に輝く液体を持ちました。
「それは窓辺で日向ぼっこしているワンちゃんの色」
「じゃあ、これ」
みいなはちょっと意地悪をしようと、灰色に光っている試験管を手に取りました。
「それはうーん、あ、わかった。川にある小石の色」
「ええ。そうかな。私はこれの方が縁側で日向ぼっこしている猫ちゃんの色だと思うけど」
「あのぅ……お嬢さん方、あっしは学がねえカラスだから詳しいことはわかんねえんでございやすが、世界を作るビーカーが、またグツグツとしちゃあいないでしょうか? あっし、これ化学反応ってやつじゃねえかと思うんですよ。ああいうのって、一回反応が始まったら、さっさと完成しないとダメになっちゃうってやつじゃないですかね……?」
平助は自信なさげに、世界を作るビーカーをくちばしでコツンとつつきました。
先ほど落ち着いた泡が、またビーカーの底から湧き上がってきています。




