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18. 世界を作る 六

「みいなさん! にいなさん! そいつは危険なやつですぜえ! 早く、手を離してくだせえ!」

 平助は部屋の端から二人を注意します。

 でも、二人の目は黒い玉に釘付けです。


「なんかさ、ちょっと美味しそうじゃない?」

「ええ、さすがにそれはないよ。でも可愛いよね」

 可愛いという言葉が分かったのか、黒い玉はみいなの手のひらをころころと転がります。


 すると、部屋に散らばっていた光の玉がやってきて、みいなの手のひらから、黒い玉を押し出そうとします。

 黒い玉も負けじと光の玉に向かっていきます。


「わわ! ちょっと! 喧嘩しちゃだめだってば!」

 みいなは光の玉と黒い玉の間を遮るように手を差し込みました。両方の玉が手に当たって、さすがにちょっと痛いです。


 みいながお願いを聞いてくれないと思ったのか、光の玉はにいなに泣きつくことにしたようです。にいなの周りをふわふわ浮きながら、何かを訴えています。


「わわ、ちょっと、近いってば。なに? どうしたの?」

 顔につくほどの近くに光の玉が来て、にいなは慌てます。


 光の玉は、びゅーんと木の机の上にあるビーカーの元に飛んでいきます。そして透明な液体が入ったビーカーに、ジャンプ! する真似をします。


 にいなは目をぱちくりしました。


 なんでわかんないのー! と言わんばかりに、光の玉はそれを繰り返します。


「えーっと、光の玉さんは、ビーカーに入りたいの?」

 にいなは聞きました。


 光の玉は興奮したように、部屋の中を舞います。


「じゃあ、入れてあげる」

 にいなが光の玉を掴もうとすると、光の玉はするりと手のひらから、すり抜けていきます。


「ちょっと! じっとして!」


 光の玉は、もう一度みいなの元に行くと、また黒い玉にぶつかっていきます。そして、ビーカーまで飛んでいって、中に入る仕草をします。


「わかった! 黒い玉をビーカーに入れたいの?」

 にいなは光の玉に聞きました。光の玉は、そうそう! と、さっきよりさらにぴかぴかと輝きました。


「ええ、ほんとに?」

 みいなは眉をしかめます。

 黒い玉は、ちょっと不思議な感じはしますが、悪いものではないと思うのです。

 夜に眠りにつくときの、ちょっと怖いような、ふわっと溶けていくような、そんな感じがします。

 それに、このダンジョンに入るときからずっと持っていたと思うと、親しみも湧いてきます。


 ですが、にいなの行動は素早くて、止める暇もありませんでした。

「ぜったいそうだよ! 試しに入れてみよう」

 そう言って、にいなはみいなの手の上から黒い玉を掴むと、液体の入ったビーカーにぽいと入れました。


 みいなは『あっ』と思いましたが、にいなならやるような気がしたので、「ああ、もう、まったく」と小さく呟くだけにしました。


 ボシャンと音を立てて透明な液体に沈んだ黒い玉は、底にころんと転がりました。そしてしばらく底をころころと転がると、じゅわっと溶けはじめます。黒い玉から黒色が滲み出てきます。透明な液体は底の方から黒色に染まっていきました。黒い玉が小さくなるにつれて、黒いものはどんどん上のほうに上がっていき、やがて透明だった液体は真っ黒になってしまいました。


 その黒色は、黒い玉と同じように黒よりもさらに濃く、もったりとして重たそうに見えます。闇を溶かしたような色です。宇宙船に乗って宇宙を見たら、こんな色なのかもしれません。

 闇色の液体は、ゆるく円を描くようにビーカーの中を流れています。まるで、温かい紅茶の中に角砂糖を溶かして、くるくるとかき混ぜたときのようです。どろりとした黒い流れは、周りと混ざり合いながら、ゆっくりと液体の中を泳いでいます。


「うわー」

 二人は思わず声を上げました。

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