18. 世界を作る 四
「うーん、この透明な液体は、闇には見えないよね。あっ! でもこの空のビーカーに移すと、闇に変わるのかもしれないよ!」
腕組みをしてうんうんと考えたにいなは、ひらめいた! と笑顔になります。
マッドサイエンティストのアニメで、そういうトリックがあったのです。
『ふはっはっは! 騙されたな! 実はお前が毒だと思っていたその真っ黒い液体は、ただの水なのだ!』と、悪の手に渡った毒を化学反応で変化させたマッドサイエンティストは叫びました。悪者は無事に捕まって、世界は再び平和になりました。
毒が水になるなら、その反対もあるかもしれない。だから、この透明な液体も、どうにかすれば闇になるのかも、とにいなは考えました。
「それは素晴らしい考えだ。さすが私の助手。でも……どの液体を入れようか?」
そうなのです。透明な液体が入っているビーカーはいくつもあり、どれも同じように見えます。違うのは、ビーカーのサイズと液体の量だけです。
「あっしにお任せくだせえ! あっしは、鼻がきくんですぜえ。液体の違いを、見事に嗅ぎ分けてみせようじゃありませんか!」
平助は張り切ってビーカーの周りを飛ぶと、一つ一つ匂いを嗅いでいきます。
さすが平助! と二人は平助を見守りました。
「分かりやしたぜ、お嬢さんがた」
平助はビーカーの横に留まると、キリッとした顔で言いました。二人は固唾を飲んで次の言葉を待ちます。
「このビーカーの中身は――」
「中身は?」
「中身は、全部同じでございやす」
「ええ」
二人はがっかりして、肩を落としました。
「でも! どれもまったく同じなんですぜえ。嘘じゃねえ。なんだったらこの平助、すべての液体を飲み干してみせますぜえ!」
がっかりした二人に慌てた平助は、羽をぱたぱたさせながら必死に鳴きます。
「落ち着いて、平助。嘘だなんて思ってないよ」
みいなは平助を宥めるように、そっと頭を撫でました。
「そうだよ! 平助は悪くないよ。じゃあ、どれを入れても同じってことだね。入れてみよう」
にいなはビーカーの一つを手に取ろうとしました。
すると、それまでふわふわと部屋の中を浮いていた光の玉が、机の周りに集まってきました。
「なに? 光の玉、助けてくれる気になった?」
にいなは話しかけてみますが、光の玉は、なにやら不思議な動きをします。
光の玉たちは、みいなの周りにぎゅうっと集まってきます。そして、みいなのお腹にぽんぽんと当たると、すばやく逃げていきます。
それを何度も繰り返すのです。
ぽんぽん、さっ
ぽんぽん、さっ
はて? とにいなたちはその謎の行動を見守りました。
「えーっと……みいな、大丈夫? 痛くない?」
にいなは聞いてみました。
「うーん、痛くはないけど……もしかして、私、攻撃されてる?」
みいなのお腹に当たる力は決して強くありませんが、光の玉からは『こいつー! やっつけてやる!』という声が聞こえそうな感じがするのです。今までの光の玉を見ても、遊んでいる時とはちょっと違うなという印象です。
「みいなさん、なにかこいつらに意地悪でもしたんですか? こいつら、親の仇を取ってやるっていう意気込みを感じますぜえ」
「そんなことしてないよ! え、私、してないよね!?」
みいなは慌てて言いましたが、だんだん自信がなくなってきます。
なんで? 洪水になった時はカティアになって助けてくれたのに。やっぱりイヤイヤだったのかな? にいなを助けるために、仕方なく、とか?
みいなはどんどん青ざめていきます。




