18. 世界を作る 二
ふむ、と腕を組んだにいなは、手をぽんと叩きました。
「ああ! 私、分かっちゃった! この空のビーカーに、世界を作ればいいってことだよ。この目盛りの一番上に1000mlって書いてあるから、ここまで光と闇ときらきらしたものを混ぜればいいってことだと思う!」
にいなは目盛りの線を指でなぞりながら得意げに言いました。そして、「1000mlは1リットルのことだよ」と胸を張って付け加えました。
「さすがにいなさん! 賢いお嬢さんでございやすねえ。おみそれしました!」
平助はカーっと鳴いて何度も首を縦に振ります。
「うん、えっと……それくらいは私にもわかるよ」
みいなは目をぱちくりさせながら言いましたが、にいなと平助は聞いていません。
にいなは平助に、目盛りの数え方を教えてあげています。
「この一番下の太い線が100mlでね、次が200mlでね――」
「そうですか、そうですか。あっしは初めて知りましたぜえ」
にいなとみいなのママたちは、手作りお菓子を作るのが好きです。冬はクッキーやマフィンなどの焼き菓子を、夏は涼しげなゼリーやアイスなどを作ります。にいなとみいなは、そのお手伝いをよくします。だって、一緒に作ったら、ボウルに残ったホイップクリームや、パウンドケーキの端っこを食べることができるのです! 完成したお菓子ももちろん美味しいけど、途中でつまいぐいをできるのが、お菓子作りの楽しみなのです。
この前は、ママたちのお誕生日だったので、にいなとみいなは二人だけで大きなゼリーを作りました。本当は大きなプリンが作りたかったけど、バケツサイズのプリン型なんて、オーブンには入らないよとパパに言われてしまったので、ゼリーにしました。ママたちが小さい頃、バケツサイズのプリンが食べたかったという話を聞いて、にいなとみいなは二人の夢を叶えてあげようと思ったのですが。
パパに協力してもらって、ママたちには内緒で作りました。ゼラチンをたくさん買ってきて、オレンジジュースを買ってきて、二人でインターネットで調べたレシピを見ながら作りました。ゼリーの上には生クリームやプリンやチョコレートやクッキーをデコレーションして、完成。ママたちはとても喜んでくれました。
だから二人は、ゼラチンの量も、お砂糖の量も、オレンジジュースの量も、ばっちり量ることができます。
にいなはそのときのことを平助に語って聞かせました。平助は熱心に話を聞いてくれるので、にいなもついついたくさん話したくなります。
「――だからね、きっと世界を作るこれも――」
にいなはビーカーを手に取ろうとしました。でも、それまでうんうんと話を聞いてくれていた平助が、いきなり鋭く鳴きました。にいなはびっくりして手を止めます。
「にいなさん、こういった摩訶不思議なものを素手で触っちゃあいけないですぜえ。危ないですぜえ。あっしは何度もそれで痛い目にあってきたんですぜえ」
平助は真剣な顔で言いました。その勢いに押されるように、にいなはこくこくと頷きました。
「ええっとね、じゃあ……」
にいなは部屋の中を見渡します。コート掛けが目につきました。ふっくんがその上に留まってすやすや眠っています。コート掛けには、科学者が実験する時に着るような白いコートがかかっていました。
「これを着よう!」
にいなは白いコートを着てみました。袖も裾も引きずるくらい長いので、袖をまくります。パリッとアイロンがされた薄手の白いコートを羽織ると、自分が賢くなったような気持ちになります。




