17. 祭壇の部屋 三
「返してって言われても……」
にいなは呟きました。
みいながぎろりと睨んできます。これは本気で怒ってるなと思ったにいなは、「ふっくん、すごいね! どうやったの?」とふっくんに話をふりました。
「にいなが落っこちたから、おいら必死に小さくなって、みいなの脇を抜けたんだ。そこから大きくなって、間一髪、にいなのことをキャッチしたんだぞ」
ふっくんはえへんと胸を張ります。
「すごいね。ふっくん、大きくなったり小さくなったり、またできるようになったんだね!」
にいなは手を叩いてふっくんのことを褒めました。
「えへへ。おいら、やればできるフクロウなんだぞ! 友だちのためなら、おいら、できるフクロウなんだ……よかったぞ……」
そう言いながら、ふっくんはポロリと一粒涙をこぼしました。みいなはふっくんの涙を優しく手で拭いました。
「ふっくん、すごかったよ。ビュンって私の顔の横をすり抜けて、ぶわって羽を広げたの。かっこよかった!」
みいなもふっくんを褒めました。
「えへへ。おいら、やればできるフクロウなんだ。でもちょっと疲れちゃったぞ。休むぞ。ぐー」
ふっくんはパサっと部屋の端に飛んでいくと、目を閉じてすやすやと寝息を立て始めました。
二人はふっくんの寝顔を覗き込みました。
「ふっくん、寝ちゃったね」
「がんばってくれてたもんね」
ふっくんの寝顔は安らかで、少し笑っているようにも見えます。
二人はそのことにほっとしました。このまま休ませてあげよう、と目で会話をして、うなずき合いました。
おぉぉぉぉ、という音が聞こえてきました。その音は、今通ってきた通路から響いているようです。
二人は手をぎゅっと握り合って、壁の高いところにある通路の入り口を見つめました。
「お嬢さん方! ふっくんさん! ご無事でいらっしゃいやすかっ! 平助が、カラスの平助が、参りやしたぜぇ! おおーーーい!」
バサバサと大きく羽を広げながら通路から出てきたのは、興奮している平助でした。ぐるぐると部屋の中を行ったり来たりしながら、大きな声でにいなたちを呼びます。
「にいなさぁん! みいなさぁん! ふっくんさぁん! 平助でございやすよぉ!」
「平助! しーっ!」
にいなとみいなは人差し指を口元に持ってきて、平助に静かにするように伝えます。
「へぇっ!? どっ、どうしちまったんですか? 大丈夫ですかっ!?」
平助はさらに叫びます。
「だからっ! しーっだってば! ふっくんが寝てるの!」
にいなは平助につられて大きな声を出すと、部屋の端に置いてあるコート掛けの上ですやすや眠るふっくんを指差しました。
「にいなもうるさい!」
みいなはにいなの口を塞ぎます。
「だって――」
「だってじゃない。ああ、もう。よだれついちゃったし。平助、無事でよかった。逃げ切れたんだね」
みいなはにいなのよだれが付いた手をコートで拭いました。
「へい。あいつら、口ほどにもなかったですぜぇ。あっしがぐるぐると部屋の中を回ったら、目を回して倒れちまった」
平助は誇らしげに言いました。
「平助、すごいね!」
「口ほどにもって、まあ、フルアーマーはしゃべらないけどね」
みいなってほんと一言余計だよね、と思いながら、にいなはみいなを見ました。
その視線を感じて、みいなは、なんか文句ある? とにいなを見返しました。
「えーっと、あっし、なんか変なタイミングで来ちまいやしたか……?」
平助は二人の顔色を伺うように聞きました。
「そんなことないよ! 来てくれて嬉しい。どこも怪我してない?」
みいなは平助に手を伸ばしました。平助はみいなの腕に飛んできて、とまりました。




