17. 祭壇の部屋 一
にいなは、開けた道からぴょこんと首を出しました。
目の前に広がっていたのは、にいなのお家のリビングくらいの大きさの部屋でした。
光の玉がふわふわと楽しそうに浮いている明るい部屋です。部屋の一番奥には祭壇のようなものがあり、金色の飾りがその周りを囲っています。
教会みたいだなとにいなが思ったのは、にいなの腕の太さほどの大きなろうそくがたくさん置いてあるからかもしれません。温かいろうそくの光は、ゆらゆらと揺れながら、部屋の中を照らしています。
きらきらの装飾がほどされた祭壇の台の上には、ずっしりと大きな箱が置いてあります。
祭壇の前には、赤い厚手のラグが敷いてあります。ここに来た人が祈るためのスペースかもしれません。にいなは前に見たことがある映画で、祭壇の前にひざまずいて祈っているシスターを見たことがあるのです。
それよりさらに手前には、重そうな木の机がどっしりと置いてあります。机の上には、理科の実験で使うようなさまざまな器具が置いてありました。
「ね、見て。みいな。なんか面白そうな部屋があるよ」
にいなはみいなを呼びました。
みいなもにいなの後ろから首を乗り出して部屋を見渡します。
ふんわりと甘い匂いがするのは、キャンドルでしょうか。おばあちゃんの家でも夕方になるとキャンドルを灯します。「電気があるのになんで?」と聞くと、「電気の光よりキャンドルのほうが優しいでしょう?」と笑うおばあちゃんを、みいなは思い出しました。
「すごいね。でもこれさ、どうやって降りるの?」
みいなは思わず困った顔になってしまいます。
そうなのです。二人が顔を出しているところは、小さな出窓のようなところらしく、地面はうんと下にあります。校庭にあるアスレチックジムの一番てっぺんくらいの高さです。さすがにここからではジャンプできません。
「うーん、どうしようか? はしごとがないのかな?」
にいなはぐいっと身を乗り出しました。手がつるっと滑って、そのまま下に落ちていきそうになります。
「わ!」
みいなはにいなのコートの後ろを掴んで、にいなを引っ張りました。
「何やってるの! 危ないでしょう!」
ママと同じような叱り文句がとっさに口から出てきました。
「えへへ。ごめん、手が滑っちゃった」
にいなは舌を出して笑いました。
「まったく、もう」
心臓がドキドキしているのを隠すように、みいなは腕を前に組みました。
にいなはこういうところがうっかりさんで、目が離せないのです。小さい頃から、変なものを飲み込みそうになったり、土手に足を取られたり。ぼーっと歩いていて、自転車にひかれそうになったこともあります。
私がいないと、この子は何もできないんだから。
みいなは心の中で思いました。
それは少しわずらわしく、でも少し誇らしい気持ちです。にいなのことを本当に嫌いになったことなんて、一度もありません。
「ね、みいな、どうしよう?」
にいなはみいなに聞きます。困ったときに頼りにされるのは嬉しいです。でもちょっとむっとすることもあります。
みいなは、うーんと考えながら、もったいぶって答えました。
「そうだね、にいなは、どうしたらいいと思う?」
何の考えも思い浮かばなかったので、にいなに逆に質問することにしました。
にいなは素直にうんうんと考えています。
「えっと……みいなが私の手を持って、私を少しずつ下に降ろしていくとか?」
「それでも高すぎるよ。私が堪えられなくなって手を離しちゃったら、にいな足が折れちゃうかもしれないよ。もしかしたら死んじゃうかもしれない」
「えっ! それはやだ! じゃあ、えっと、そうだな。光の玉さんにお願いして、下まで下ろしてもらう!」
にいなとみいなは期待を込めて光の玉を見ましたが、光の玉は二人の周りをぷかぷかと浮かんだり、光の部屋から暗い通路を行ったり来たりするだけで、助けてくれそうにはありません。




