3. フクロウと冒険 一
小山に続くせまい道は真っ暗で、上のほうに向かう先は、よく見えません。道の両側から枯れ木がにょきにょきと生えていて、光を遮っているのです。
「ここ……登るの?」
みいなはイヤそうな声で言います。
このお山の上には、小さな公園があります。
木に囲まれたその公園は、夕方になると遊ぶ子供もほとんどいなくて、ちょっと怖い場所に変わります。
風は吹いていないのに木がざわざわと揺れたり、何かの動物の鳴く声がしたりするのです。
いつの間にか遊んでいる子供が増えるとか、いつの間にか消えるとか、子供達の間でうわさになっているのです。大人たちは笑ってそんなことはないよと言いますが。
古い公園で、遊具もボロボロです。
だから、近所の子供もあまり遊びに行きません。
「うん……でも、カラスがこの上に行っちゃったから」
にいなは坂の上を見ながら言います。怖けずいてる二人をからかうように、枯れ木がさわさわとゆれます。
みいなは、ママが時どきやるように、「はぁー」とため息をつきながら、両手のひらを上にして肩をすくめました。
にいなはいつもはおっとりしているけど、ときどきがんこ者になります。こうなったら、にいなは絶対に気持ちを変えないことを、みいなはよく知っています。
お姉ちゃんのみいなは、にいなの面倒を見なければいけません。みいなは諦めて、にいなの背中を押しました。
二人は駆け足で坂を上って行きます。一度止まってしまったら、怖くて動けそうにありません。
いつもより早く走って、てっぺんにある公園に着いたときには、すっかり息が上がっていました。
公園には、街灯が一つぽつんとあるだけで、他に灯りはありません。
灯りは、真ん中にあるさびついた小さなアスレチックジムをぼんやりと照らしています。その近くにはベンチが一つあります。
あとは、キャッチボールをするための場所があるだけの、小さな公園です。
晴れの日は、木々の隙間から街を見下ろすことができるそうですが、景色なんて見てもちっとも面白くありません。
公園を囲む木々が、ざわざわと揺れています。葉っぱはすっかり落ちていて、まるでしわしわのおじいさんのようです。
街灯に照らされた長い木の影は、今にも動き出して二人を捕まえそうです。
にいなは大きな落ち葉を踏みながら、公園の中に入っていきました。
パリッと音がする、カラカラに乾いた葉っぱを踏むのがにいなは好きです。みいなが止めないと、道路にある葉っぱまで踏みに行こうとするので、みいなはいつも注意します。
「カラス、どこに行っちゃったんだろう?」
パリッとする音をひびかせながら、にいなが言います。
「もう諦めようよ」
みいなは公園の入り口で立ち止まって、中には入りません。
「でも、水晶ときらきら石が、」
「なくしたって言えばいいじゃん。寒いし、疲れたし、もう私、歩けない」
みいなはしゃがんで膝におでこをつけました。
家にいることが好きなみいなは、走ることは得意ではありません。
体育の授業もあまり好きではありません。
体育の授業中は、みんな友達同士が固まって話したり、動いたりするので、みいなはいつもひとりぼっちになります。
ペアを組むときも、チームを作るときも、みいなはいつも最後まで残ります。
そういう時は悲しくて、早く家に帰りたくなります。
その時のことを思い出してしまって、みいなは泣きたくなってきました。
にいなが近寄ってきて、いろいろ言っていますが、そんなことは聞きたくありません。
「早くお家に帰りたい……」
小さくつぶやいた声に、涙と鼻水が混じります。