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16. 抜け道と姫の試練 九

「私とは違うって……なんでそんなこと言うの、にいな? 同じだよ。髪の毛も、目の色も、私たち、同じでしょう? なんでそんな悲しいこと言うの?」

 にいなはついに泣き出しました。


 それを見て、みいなはちっと舌打ちをしました。


 これは同級生の女の子がやっていたのを、みいなもこっそり家で練習したのです。みいながその子にぶつかってしまった時に舌打ちをされたのが、悲しくて腹立たしくて、「私もいつかやってやる」と思ったからです。

 でも、そんなことをする機会なんて今までなくて、初めてした舌打ちがにいなに対してだったことに、みいなはお腹がずんと重くなりました。


「にいなはそうやってすぐに泣くんだから」

 自分のことは棚に上げて、みいなはにいなに対して腹を立てました。


 双子みたいなんて言われてるけど、結局私の方がお姉ちゃんで、にいなの方が一つ下。何かあったら、みいなはお姉ちゃんなんだから我慢しなさいとか、みいなはお姉ちゃんなんだからにいなの面倒を見てあげなさいとか、周りの大人に言われる。

 いつもみいなは私の後ろをついてまわって、うっとうしい。

 もしかしたら、にいながいるから、みいなには同い年の友達ができないかもしれないのに。

 にいながきらきらしたものが大好きだって誰にでも言うから、それで浮いてるのに。


 前に校庭で体育の授業をしているにいなをちらっと見かけたけど、誰もにいなをドッジボールのチームに入れようとしてなかった。それでもにいなはニコニコしてて、最後に先生が無理やり一つのチームに入れていた。


 それを見ていたみいなは、お腹の底がツンと痛くなるような気持ちになりました。


 なんでそんな風に仲間はずれにするの?

 なんでにいなはそんなひどいことをされたのに、ニコニコ笑ってるの?


 にいなだって……にいなだって、もっと普通にしてれば、クラスから浮くこともないのに。にいなは明るいし、優しいし、人の悪口も言わないし、私なんかとは全然違うんだから、もっと大切にしてあげてよ。


 しかも、授業中にあまりにもみいなが怒った顔をしていたからか、先生に生意気だと叱られてしまいました。

 みいなはそれ以来、なるべく無表情でいることを心がけています。


 いいの。どうせ私は闇属性だし、暗いし、友達もいないし、ねちっこいし、人にやられたこととか絶対に忘れないし。


 目の前では、ついににいなが大きな声を出して泣き出しました。


 むかっとする気持ちをため息で吐き出して、みいなはにいなを慰めようとしました。みいなが手を伸ばそうとしたその時、にいなが目に涙を溜めたまま顔を上げました。


「みいな、校歌を歌おう」

「なんでよ! いやだって言ったじゃん。私、あの曲嫌いなの!」

「でもずっとここにいても、暗い気持ちになるだけだよ。明るいところに行けば、きっと元気になるよ。この先には明るい場所が待ってるって、私は思う。みいなもそう思うでしょう?」


 光が漏れているその先からは、ドクンドクンと何かが揺れ動いているような気がします。

 お母さんにぎゅっと抱きしめられた時のような、ほっとする何かが、あちらにはあるような気がするのです。

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