16. 抜け道と姫の試練 五
「それなら仕方ないね。ここ、ダンジョンだもんね。ふっくん、私たちのことを諦めずにいてくれてありがとう」
「ほんとに! ふっくん、ありがとう!」
「みいな、にいな、おいらのこと、怒ってないのか?」
「怒るわけないよ。また会えて嬉しい」
「そうだよ。ふっくん、辛いこと話してくれてありがとう」
ふっくんはとうとう泣き出しました。
悲しそうな、安心したような、色々な思いがごちゃ混ぜになったふっくんの鳴き声が道に響きます。
にいなとみいなは手を伸ばしてふっくんをぎゅっと抱きしめました。
ふっくんの震える体は温かくて、羽は滑らかです。でも、ところどころ羽が折れていたりするのは、きっとお外の世界でいろいろあったのだろうことの証です。
みいなは動物園にいたフクロウのことを思い出しました。
あの子たちは、狭い檻の中にいるけど、安全で。
ふっくんは広い空を飛べるけど、こんなに傷ついていて。
どっちが正解なんだろう。
どっちが幸せなんだろう。
ふっくんも動物園に入れば、寂しくて一羽で泣くこともないのかもしれない。
でも、二人を乗せて空を羽ばたいていたふっくんは、本当に生き生きしてた。
みいなは、何が一番なのかわからなくなってしまいました。
「よし。にいな、みいな、先に進むぞ」
ふっくんは涙を引っ込めて、気合の入った声で言いました。
二人は「うん!」と返事をしました。
道の中は相変わらず狭くて冷たいです。
ずっと四つん這いをしているので、膝小僧が痛くなってきます。まだ先も真っ暗です。でも、二人の心は少しだけ暖かくなったような気がしました。
カタン!
パサパサ
ビュー
何かの音が後ろから聞こえてきました。道の中は音がよく響きます。二人と一羽は、思わず動きを止めました。
「ねえ、今の、聞いた?」
「うん」
バサバサ
ビュー
カツカツカツ
先ほどより大きめの音がします。
「なんだろう? 平助かな?」
「そうだといいんだけど……どうかな? 平助の羽の音って、こんなだったっけ?」
狭い道の中で音が反響するので、パサパサという音は、高い音にも、低い音にも聞こえます。
それが遠くから近くへ移動しているような気がするのです。
「もしかしたら、フルアーマーが入ってきたのかもしれないぞ」
おそるおそるふっくんは言いました。
「それはないよ、多分。だって、あのフルアーマーはこの通り道より大きかったでしょう?」
「でも、おいらみたいにうん! って力を入れれば、大きくなったり、小さくなったりできるのかもしれないぞ」
「そうだよ! さっき、がしゃん! ってなったのに、しゅっ! って元に戻ったし!」
二人と一羽はうーん、と考えました。
小さくなったフルアーマーが一斉に進んでくる様子を想像して、青ざめました。
「急げ!」
本当は駆け上がりたいところですが、立とうとするとおでこをぶつけてしまいます。二人は必死で駆け足になりました。ふっくんも羽を広げられないので、がんばってぴょんぴょん跳びながら前に進みます。
遠くで聞こえていたはずの音は、どんどん差し迫ってきます。
下を向きながら一心不乱にはいはいをしていたにいなは、ふっと頭を上げました。暗闇の先に、一筋の光が見えたような気がしました。




