15. 光の姫 六
「やっぱり!? そうだよね!」
みいなは興奮したように言います。
みいなはわかってるみたいですが、にいなはピンときません。
普通に、次に行ってくださいって言えばいいのに。
にいなの呟きは声に出ていたようで、ふっくんがそれに答えました。
「だってにいな、美味しいものをたくさん食べたんだろう? そしたら、『あー、もうここから動きたくないなー』って思うだろう? そしたらフルアーマーは困っちゃうと思うんだぞ」
そうかもしれないと、にいなは思いました。
だって、座っていれば美味しいものがどんどん出てくるのです。どの料理も本当に美味しかった。フルアーマーが追いかけてこなかったら、あのまま、にいなとみいなはここでごろごろして、眠ってしまったかもしれません。そして起きたら、また美味しいものを食べるのです。
何日か、ううん、何週間か、ここにいてもいいかもしれない。
夏休みだったら、もっと長くいられるかもしれない。
そしたら、ママとパパも連れてきて、みいなのママとパパも連れてきて、みんなで美味しいものを食べて――
「私たち、危なかったね」
にいなが想像を膨らませていると、みいなが突然思いもよらぬことを言いました。
「そうかな?」
にいなは首を傾げます。
「危なかったよ。だって、ずっと下でだらだら食べてたら、モンスターの餌食になってたかもしれないよ」
「ええ。それはないよ」
だって、モンスターなんて、ダンジョンに入ってから一度も見ていません。
「私たちがまるまる太ってから食べにくるモンスターがいるかもしれないでしょ」
「ええ」
「おとぎ話にもあるでしょ? お菓子の家に入った子どもたちが魔女のおばあちゃんに食べられそうになる話」
「ああ! そうだね。あるね!」
にいなははっと目が覚めました。
あの話はたしか、最後には子どもたちが魔女を煮たんだっけ? 茹でたんだっけ? とにかく子どもたちは助かって、家に帰れたけど……
「危なかったね! じゃあ、フルアーマーさんは親切で追い出してくれたのかな?」
「親切……かどうかはわからないけど。やっぱり先に進むしかないんじゃないかなあ」
みいなは気が進まなそうに言いました。
地面に降りたいとは思いますが、できれば家に帰りたいとも思います。
でも、ずっとこうしていても、家に帰れそうにはありません。
「そうだよ! 進もう!」
にいなは張り切って拳を天に上げました。
「二人がいいなら、おいらも進みたいけど……」
ふっくんは言葉を濁します。
先に進もうにも、フルアーマーをなんとかしないといけません。
みんな、うーんと唸ってしまいました。
すると、今までほとんど会話に口を挟んでこなかった平助が口を開きました。
「にいなさん、みいなさん、ふっくんさん、あっしは学がねぇカラスだから、難しいことはわからねぇ。でも、……でもここは一つ、あっしに任せていただけねぇですか。あっしがこいつらの囮になりやすから、その間に、にいなさんの言っている抜け道に逃げてください。風の匂いがするなら、きっとどっかにつながっているはずだ」
「でも、それじゃ平助が――」
にいなとみいなは反対しようとしますが、平助はそれを遮ります。
「もともとはあっしが招いたことでございやす。にいなさんのきらきら石、取ちゃってすいやせんでした。あっしがもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったんだ。これは、あっしの罪滅ぼしです。さあ、行きやすぜぇ!」
平助はカーッ! と鋭い声で鳴くと、フルアーマー目がけて突っ込んでいきました。
「平助!」
みいな、にいな、ふっくんは叫びました。




