15. 光の姫 五
「それはだな! 神話にはこんな逸話があって――」
ふっくんは疲れを忘れたように、熱心に話し始めます。
「ストップ! そんなに話がたくさんあるなら、ぜったい見つけられないよ! ね、一回下に降りよう?」
みいなは早口で話すふっくんを遮りました。
「でも、みいな。この話は面白いんだぞ!」
「そうかもしれないけど。ふっくん、一回休んだほうがいいよ」
みいなはふっくんの羽を優しく撫でました。
汗をかいているのか、羽がしっとりと濡れています。
むううっと、ふっくんは唸ります。
好きなことを話している時に、それを止められるとあまりいい気持ちがしないのは、人もフクロウも同じようです。
「で、でもさ、なんでいきなりフルアーマーさん、怒っちゃったんだろうね!」
にいなはみいなとふっくんの間を取りなすように言いました。
「ほんとだよね、あんなに親切だったのに」
みいなも賛成します。
「初めから追いかけられてたんじゃないのか?」
ふっくんは興味を引かれたらしく、聞いてきました。
「初めはいい人だった」
「席まで案内してくれたし」
「スプーンも持ってきてくれたよね」
「ご飯いっぱい食べても怒らなかったのに」
「美味しかったよね」
そうだよね、と二人が話し合っていると、ふっくんは叫びました。
「知らない人からご飯をもらっちゃダメなんだぞ!」
その言葉の強さに、思わず二人は会話を止めました。
「……ふっくん?」
大丈夫? とみいなは聞きました。ちょっとふっくんの様子がおかしいと思ったのです。
「おいらの仲間には、毒を盛られて、捕まえられたり、死んじゃったりしたフクロウもいるんだ。だから、ぜったいにダメなんだぞ……」
ふっくんは震えるような声を絞り出します。
「ふっくん、ごめんなさい。これからは気をつける」
みいなは反省しました。
ふっくんは外の世界で生きているフクロウです。きっといろいろなことがあったのでしょう。怖い思いもたくさんしてきたのだろうと思います。
にいなもしゅんとして、「気をつけます」と言いました。
「まあ、ここは大丈夫だと思うぞ! 姫の遺跡だからな!」
ふっくんは、しんみりしてしまった雰囲気を明るくさせるように言いました。
「うん……フルアーマーに追いかけられてるけどね」
みいなは懲りずにみいなの頭を掴もうとするフルアーマーを避けながら言いました。
「なんでいきなり追いかけてきたんだ?」
ふっくんは聞きます。
「わかんない。お腹いっぱいになったから?」
みいなは首を傾げました。
「私、最後ちょっと残しちゃったから、それでフルアーマーさんが怒ったのかも……」
にいなは申し訳なさそうな顔になります。
「なんか、フルアーマーにしたのか?」
「ええ、なんにもしてないよ。お腹いっぱいになったから、『ごちそうさま』しただけ」
親切にしてくれた人に変なことするわけないじゃん、とみいなは口をとんがらせました。
「『ありがとうございました』ってちゃんとに言ったよ!」
にいなもちゃんとにお礼したし、とふっくんに伝えます。
「それだ!」
ふっくんはばさりと羽をうごかしました。
「どれ?」
「『ごちそうさま』か、『ありがとう』だよ!」
二人はなんのこと? と顔を見合わせました。
ご飯を食べたら『ごちそうさま』をしなさい、といつも家で言われています。
作った人にありがとうの気持ちを伝えるのだとママは言います。
お米を作ってくれたお百姓さんに感謝するのだとパパは言います。
それで、なんで怒るの?
「キーワードだぞ! フルアーマーは、キーワードを聞いたら次のアクションを取るように指示されていたんだと思うぞ!」
「やっぱり!? 私もそうだと思ってたの!」
みいなは顔を輝かせます。
ありがとうをしたら怒るように指示されてるなんて変なの、とにいなは思いました。
「多分だけど、次のステップへ進めということだと思うぞ!」




