14. ふっくん、平助、参上! 三
フルアーマーもそれを見たようです。急に自信を取り戻したかのように、じりじりとにいなに近寄ってきます。平助の威嚇もどこ吹く風です。
まずい……
にいなは割れたお盆を握りしめながら、冷や汗をかきました。これではさっきと状況が逆です。
なんで、割れちゃったの、お盆……
にいなは知りませんが、このお盆は特別なお盆なのです。
職人さんが一つ一つ手作りしたお盆には、職人さんの気持ちが込められています。「使う人が美味しい食べ物を運べますように。そのために役に立つお盆を作ろう」と。
丁寧に作られたお盆は、ずっと使えるようにと頑丈にできていますが、人やフルアーマーを叩くための道具ではありません。にいながフルアーマーをばんばん叩いたので、悲しくなって割れてしまったのです。
「にいな!」
みいなの呼ぶ声がします。振り向くと、ふっくんに乗ったみいなが手を差し出しています。
にいなは急いでみいなの腕を掴みました。ふっくんがぐっと羽を羽ばたかせて、上空に浮いていきます。
「みいな! ありがとう!」
にいなは宙ぶらりんのまま言いました。
「早く上がってきて! 腕がちぎれる!」
みいなはにいなをぐっと引き上げました。
「お嬢さん方、ご無事で!」
後から追いかけてきた平助がふっくんに並びました。
上へ、上へと昇っていきます。天井のきらきら星が手に届きそうなところまできました。
「ふっくん、よかった、無事で! あとで探しに行こうってみいなと話してたの。ごめんね、すぐに助けに行けなくて」
にいなはふっくんの羽を撫でました。
「みいな、にいな、ごめんよ。おいら、二人がカラスの女王様に脅されるの、見てたんだ。乱気流にさらわれて、おいら木に引っかかって気を失ってたんだけど、カラスの大きな鳴き声で目を覚ましたんだ。そしたらカラスの大群が二人に群がってて……二人が遺跡に入ったから追いかけようとしたんだけど、扉が閉まっちゃって……」
ふっくんはごめんと繰り返します。
「怖いのはみんな同じだよ! ……って、違うの、だからふっくんが意気地なしとか言ってるんじゃなくて……えっと、その、助けに来てくれてありがとう」
みいなは慌てて言いました。だんだん声が小さくなっていきます。
人間のみいなとにいなでも、カラスの大群は怖かったです。鳥のふっくんにとって、カラスはもっと怖い存在なのでしょう。前にカラスに襲われたことがあるとも言っていたし、みいなだってもし逆の立場だったら、怖くて出て行けないかもしれないと思いました。
それなのに、あんな言い方して。
もっと優しい言葉をかけられればいいのに、とみいなは唇を噛みました。いつも最初に出てくるのはキツイ言葉。だからクラスの子にも変な目で見られるんだ。だからみんな友だちになってくれない。いっつも私は、どうして……
みいなはどんどん悲しい気持ちになってきました。
「そうだよ! カラスの女王様、怖かったもんね!こぉんなおっきくて、パクって食べられちゃいそうだった!」
にいなが腕を大きく広げてカラスの女王様のモノマネをします。
みいなは肩の力がふっと抜けました。
ふっくんも平助も、ぷぷっと吹き出しました。
いつもこうなのです。にいなはそこにいるだけで、周りの雰囲気を明るくできるのです。みいなには、ぜったいに真似できません。羨ましくて、自分には真似できないことが悲しくて……
みいなはうつむきました。
「ふっくん、大丈夫だよ! みいなが私を助けてくれたから! 女王様と私の間に立ってね、女王様に言い返したの。みいな、すごくかっこよかった!」
ね、とにいなはみいなに笑顔を向けました。
みいなは顔を真っ赤にして「そんなんじゃないし」と小さな声でつぶやきました。
「みいな、照れてるー!」
にいなはみいなのほっぺたを指で突きます。
「やめてよ、うざい」
みいなは赤い顔を隠すように、にいなの手を払います。




