13. 晩餐会 五
「ねぇ見て。フルアーマーさんが他にもいる」
今まで食べ物しか見ていていなかったから、気づかなかったのでしょうか? デザートが置いてあるテーブルの反対側の壁には、フルアーマーが何人も並んでいます。
「一、二、三、四……四人いるね。真ん中の空いてるスペースが、さっき案内してくれたフルアーマーさんの席だったのかな?」
フルアーマーは、二人並んで真ん中に空間があり、そしてまた二人と並んでいます。
にいなはおーい! と手を振ってみました。ですが、フルアーマーはぴくりとも動きません。
「あっちのフルアーマーは動かないやつなのかもしれないね」
みいなはスイーツのテーブル側の角に立っているフルアーマーを見ながら言いました。剣を持っているのが気になるなとは思いましたが、目の前にある飴細工の白鳥の方が、よっぽど気になります。
どうやって作るんだろう。飴ってこんなに細く伸びるのかな?
ふわっとあくびが出ました。
「ああ、お腹いっぱい!」
二人は同時に言うと、笑い出しました。
そして続けます。
「ごちそうさまでした」
ガシャン!
スイーツのテーブル側の角に立っていたフルアーマー二人が、突然動き出しました。右手に剣を高く掲げたまま、にいなとみいなのもとにずんずんとやってきます。
カシャン、カシャン、カシャン
「あ、フルアーマーさん! 美味しかったです。ごちそうさまでした」
みいなは笑顔でお礼を言いました。
「本当に、すごく美味しかったです。ごちそうさまでした。ね、これ、ちょっと持って帰ってもいい? こんなにいっぱいあっても、残っちゃったらもったいないし」
にいなはちゃっかりお土産を持って帰ろうとします。
ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン
フルアーマーはにいなとみいなの傍に立つと、止まりました。
片手で剣を持っていたフルアーマーが、両手で剣を握り直しました。そのままさらに上へと剣を上げていきます。
大きなフルアーマーの影に入った二人は青ざめました。
どう見ても、お皿を片づけに来てくれたとは思えません。
「えっ! ちょっと! 待って! わっ!」
二人の叫びも虚しく、フルアーマーは二人が座っていた椅子を目掛けて剣を振り下ろしました。
にいなとみいなは、間一髪のところで椅子から滑り落ちました。ばさっと椅子が真っ二つに切られています。あんなに大きくて頑丈そうだった椅子がスパッと切れたことに、二人は息を飲みました。
二人は咄嗟にテーブルの下に隠れました。お腹が苦しいけど、そんなことを言っている場合ではありません。小さくしゃがみ込んで、目を忙しなく左右に動かします。
カシャン、カシャン、カシャン
今まさに椅子を真っ二つにしたことなどなかったかのように、フルアーマーはゆっくりと歩いてテーブルの下を覗きこみます。
「ええ、やだ。ちょっと、何!? フルアーマーさんがいきなり怒っちゃった!」
「なんで!? いきなり。私たち、何かした?」
「わかんないよ。あんなにいっぱい食べても怒んなかったのに。それとも途中からずっと怒ってたのかな?」
にいなは最後に食べたチョコレートケーキを残したことがいけなかったんじゃないかと思いました。いつもママに「自分が食べられる分だけ持ってきなさい。残したら、作った人がかわいそうでしょう」と言われるからです。
「それとも……それとも、何かいけないことを言っちゃったのかな? ううん、なんだろう? こういうところで、キーワードをきっかけに何かが動くことは、ゲームではしょっちゅうあるんだけど……」
みいなはブツブツと考え込みました。
にいなはみいなのところまでテーブルの下を全力ハイハイで向かうと、みいなを引っ張りました。
「みいな! そんなことを考えている場合じゃないよ。早く逃げなきゃ!」
みいなは一度考え事を始めると、その他のことがお留守になるのです。
にいなはテーブルの下で息を潜めながら、フルアーマーの動きを目で追います。
どうやら、フルアーマーはテーブルの下には入ってこれないようです。ですが、大きな剣をぶんぶんと振り回している様子は、とても友好的には見えません。
「でも、どっちに行けば……?」
「戻ろう」




