13. 晩餐会 三
椅子は、背もたれがうんと高くて、ふかふかの肘掛けがついている立派なものです。背もたれのふちには、きらきら光るいろいろな色の宝石が埋め込まれています。見た目からして重そうな椅子は、引いてみるとやはり重く、二人は両手でえいっと椅子を引っ張って、そっと座ってみました。
座ってみて、二人はがっかりしました。見た目はかっこいいのに、座面は硬くてお尻が痛いし、大人用(しかもすごく背が高い人用)の椅子だから、小さい二人が座ると、目の位置にテーブルが来てしまいます。
「あんまり座り心地よくないね。王様っていつもこんな気持ちなのかなぁ」
モゾモゾとお尻を動かしながら、にいなはぼやきました。
もしかして、王様がいつもしかめっ面をしているのは、椅子が悪いからじゃないかと、にいなは思いました。
みいなはにいなより少し背が高いですが、それでもいくら背筋をピンとしても、顎の位置にテーブルがきてしまいます。これでは美味しくご飯を食べるのは難しいです。
すると、ポンという音がして、お尻の下にクッションが現れました。ふかふかのクッションです。これでもう、お尻は痛くありません。
「わ!」と二人が驚いている間に、今度は椅子の脚がニョキニョキと長く伸び始めます。まるで椅子が生きているようです。ジャックと豆の木のように、どんどん上へ伸びていって、やがて天井を突き破って――ということには、幸いながらなりませんでした。
二人にとってちょうどいい高さで、椅子はぴたりと止まりました。これならテーブルの上の物も簡単に取れます。
「すごいね! この椅子、伸びるんだね」
にいなは肘掛けから身を乗り出して、椅子の脚を見ました。
「やっぱりこのダンジョンには魔法があるんだね。だからいろいろ動くんだね。ねえ、フルアーマーさん?」
みいなは嬉しそうにフルアーマーがいた方を見ました。
ですが、フルアーマーの姿は見えません。
あれ? と二人が首をかしげていると、ガシャンガシャンと音を立てながら、二人のもとにフルアーマーがやってきました。手にはお盆を載せています。
フルアーマーは二人の前に、お皿とナイフとフォークとスプーンを並べました。
そして深々とお辞儀をすると、何も言わずに二人の元を去っていきました。
どこに行くんだろう? と二人が見ていると、フルアーマーはお盆をデザートの乗ったテーブルに置き、そのまま部屋の角まで歩いていきます。
にいな側の角に一人、みいな側の角に一人です。角まで行くと、フルアーマーはカシャンと音を鳴らして半回転し、ビシッと立ちました。そして、腰につけた鞘から長く大きな剣を引き抜きます。その剣を両手で持ち、高く上に掲げました。
一連の流れは、まるで舞台の劇のようで、にいなとみいなは拍手をしました。フルアーマー二人の呼吸の合った動きをすごいと思ったからです。
フルアーマーは拍手に応えることなく、石像のように固まってしまいました。剣先が天井からの光を反射して、日没後の一番星のように輝いています。
「えっと、これって、私たち食べていいってことだよね?」
にいなは、みいなに聞きました。
「うん、たぶん。きっと私たちゲストをおもてなししてくれてるんだと思う」
でも、と二人は迷ってしまいました。
いつもママから、知らない人にもらったものは食べちゃいけませんと言われているからです。なんで? と聞いても、とにかくダメと言われるばかりです。
二人はもじもじと椅子の上でお尻を動かしました。
肉の焼ける匂い
甘いスイーツの匂い
カレーの匂い
ピザのとろけるチーズの匂い
頭の中は、食べ物のことでいっぱいです。
ちょっとだけ。
味見だけ、ね。
にいなはそうっと目の前にあったブドウの房から一つブドウを取ると、口に入れました。
口の中にじわりとブドウの甘さが広がります。同時にお腹も鳴りました。




