12. 暖炉の部屋 三
「ほら! 私言ったじゃん。私たち二人とも、光の玉にお願いを聞いてもらえるんだよ。入り口でだって、二人で校歌を歌ったから光の玉が来てくれたんだよ。私一人じゃだめだったもん。すごいね。もしかしたら私たち、魔法使いなのかもしれないね。ね!」
ほんとうに魔法使いだったらどうしよう。
空をほうきで飛べるかな?
魔法で王子様をカエルに変えられるって、ほんとかな?
黒いローブを着て、杖を持って、ほうきを持って。
にいなは考えるだけでワクワクしてきました。
そんなにいなを見たみいなは、魔法使いなんているわけないと思いつつも、楽しそうに話すにいなにつられて笑顔になりました。にいなは話に夢中ですっかり手がお留守になっていたので、にいなからタオルを受け取って自分の髪の毛を拭きました。
猫がみいなのコートを前足で軽く引っ張りました。
なに? とみいなは首を傾げます。にいなもつられて同じ方向に首を傾げて、「あ!」と言いました。
「猫ちゃん多分、コートも脱ぎなって言ってるんだよ。中もびしょ濡れ――ああ!」
にいなは急いでコートのチャックを開けました。
ごろんとビーカーがずり落ちて、ふかふかの絨毯の上に転がります。
「わ! ちょっと! 気をつけなよ。割れちゃったらどうするの?」
みいなは慌ててビーカーを手に取ると、暖炉の明かりに当ててみます。
ヒビは入っていないようです。取っ手もしっかりと付いています。
「大丈夫? 壊れてない? さっき、トカゲ……じゃなかった、みいなの水竜に齧られ……じゃなくて、助けてもらったから」
みいながにいなを睨んできたので、言葉を選びながら話しつつ、にいなはビーカーを見つめました。
「大丈夫だと思う。でもガラスだから割れたら危ないよ。私が持とうか?」
みいなが聞きます。
うーん、とにいなは考えました。みいなが持ってくれれば、楽なことは楽です。みいなはにいなみたいに、いきなり走り出したりしないし、転んだりしないし、どっかにぶつけることもないでしょう。
そうなんだけど、そうなんだけど……
ふわあとにいなはあくびをしました。頭がぐらんぐらんと左右に大きく揺れます。
暖かい暖炉の前で温まっているので、どんどん眠たくなってきます。
もう時間は、真夜中に違いありません。大晦日だって、クリスマスだって、こんなに夜遅くまで起きていることはありません。ママに早く寝なさいと言われるし、大晦日やクリスマスくらい、ちょっと遅くまで起きていたいと頑張って起きていても、家族でテレビを見ているうちに眠ってしまいます。だから二人は、まだサンタさんに会ったことがありません。
サンタさん、にいなの欲しいものはね――
まぶたが重くなって、にいなはふかふかのクッションに頭を預けました。夢の中でサンタさんに欲しい物をお願いして、にいなは夢の世界へと旅立ちました。
みいなは寝息をてて始めたにいなを起こそうと、にいなの体を揺さぶりました。でもにいなに腕を引かれて、そのまま横になってしまいました。
カティアがみいなを呼んでいます。
待って、今行くから。
みいなもすっかり夢の中です。カティアと、今度こそ大空を飛び回るのです。
暖炉の部屋には、木のパチパチと燃える音と、二人の寝息だけが聞こえます。




